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日本ならではの感性で平和訴え '06/8/3

 いつの時代でも、どの国でも通じるデザインを常に考えている。ニューヨーク近代美術館ポスター国際指定コンペ一席をはじめ国内外の受賞歴は豊富だ。「日本発のポスターには、日本ならではのフィーリングが大切」。二〇〇六年、平和の願いは、日本美を融合して浮き立たせた金色のチョウに乗り、世界を舞う。

 一九八三年、当時の日本グラフィックデザイナー協会の会長だった故亀倉雄策さんが第一弾として制作した「ヒロシマ・アピールズ」ポスターに衝撃を受けた。燃え落ちるチョウを描いた幻想的なデザイン。それまで戦争反対を訴えるポスターというと暗かった。美しく描いた亀倉さんの作品は「コペルニクス的転回だった」という。

 以来、このポスターには注目してきた。今回、約二千四百人の会員から制作者に選ばれ、「あのとき死んだチョウを復活させよう」とすぐに思ったという。

 デザインは「いろいろな要素を一枚の作品の中に盛り込んでいく仕事」。今回も仕掛けは多い。チョウは近世の豪華本「嵯峨本」から微細に描き起こした。上部の青は浮世絵の風景版画から引用。二つ合わせて、「貴族の気高さと庶民のパワー」の融合を狙った。チョウが守る玉は平和を願う思いであり、地球でもある。金色の背景に金色のチョウを埋め込み、宗教的な世界を醸し出した。

 完成披露のため、初めて広島市を訪れた。「都市計画に基づき、きれいな建物が並ぶ夢のような街。裏を返せば原爆で焼け野原になったからでしょう」。むろん、ポスターには鎮魂も込めた。東京都板橋区で妻と暮らす。(岡田浩平)


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