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ちょっとの地震でも外に飛び出したい 被爆3年後50人の叫び '06/8/4

 ▽谷本牧師の記録 妻保存

 「原爆乙女」の治療や原爆孤児支援の「精神養子」運動を進めた広島流川教会(広島市中区)の谷本清牧師(一九〇九〜八六年)が、原爆投下三年後の四八年に被爆者五十人を対象に実施した被爆状況や身体的影響、生活環境を調べたデータが保存されていることが分かった。被爆の「心理的影響」についての設問もあり、心の傷を探ろうとする、当時としては珍しい試みもうかがえる。妻のチサさん(90)が西区の自宅で保管していた。(ラン・ショウウ)

 調査は、原爆被害を訴えるため、四八年九月に渡米した谷本牧師が、参考のために実施した。わら半紙二枚にガリ版で印刷した約三十の質問に、信者などの被爆者が自筆で回答している。

 心理的影響の質問は、「轟音(ごうおん)を聞いたとき何を想像するか」「マグネシウムのような光線を見ての心理状態」「地震を受けて原爆を想像するか」の三つ。

 心理的に何らかの影響を受けているという回答は、七割の三十四人に上った。「サイレンを聞くと今でも空襲と叫びたくなる」「(ちょっとの地震でも家の外に)すぐ飛び出したくなる。家の下敷きになり、火災が起きて焼死することを思う」など不安な気持ちが生々しく示されている。

 爆心地近くで被爆し、意識をなくしていたために、「何も感じない」と答えた人もあった。他には「終戦時の(天皇の)勅語を聞いた感想は」「原子爆弾を戦争に使用する事についてどう考えるか」「アメリカに対する感情は」など被爆後の戦争意識を尋ねる項目もある。

 西区己斐地区で被爆した谷本牧師は、「原爆乙女」の米国でのケロイド治療や「精神養子」運動に献身的に尽力し被爆者救済の先頭に立っていた。二女の純さん(55)は「一人でも多くの被爆者の声を残し、米国で原爆の悲惨さを訴えようとした父の強い思いが伝わってくる」と説明している。

【写真説明】亡夫の谷本牧師が実施した被爆者調査のデータを見る妻のチサさん


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