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苦しみの声に応えるのが被爆地の使命 '06/8/7

 ▽広島市で開かれた「劣化ウラン(DU)兵器禁止を訴える国際大会」の現地実行委員長 嘉指信雄さん(53)

 対話による紛争解決を軽視する米国。出口が見えないイラク情勢やイスラエルのレバノン侵攻など、きな臭い世界情勢を背景に、米国が驚異的な能力を持つ劣化ウラン(DU)兵器を手放す気配はみじんもない。DU禁止キャンペーンを始めた約三年前より環境は悪化している観がある。

 「壁は厚いと感じるが、具体的な取り組みが世界で起きている」。湾岸戦争やイラク戦争に従軍し、DUで健康を害したと訴える帰還兵たちが軍を告発したり、米国の下院議員の中にもDUの被害調査を求める声を上げ始めたりしているという。「対人地雷禁止で大きな役割を果たしたベルギーの国会では、DU禁止法案の提出に向けた動きがある」と力を込める。

 そうしたDU廃絶に取り組む活動家や科学者、医師ら十カ国以上の約四十人が「原爆の日」に合わせ被爆地広島へ集まった。

 「広島だからこそ、この大会を開くことができた。DU被害を訴える人たちは被爆地広島なら自分たちの苦しみを分かってくれると言う。その声に応えるのが、広島の使命ですよ」

 原点は約二十年前、米国での大学院時代。中国新聞記者の通訳として、事故を起こしたスリーマイル原発やネバダの核実験場を飛び回った。公には被害が認められていない核被害者の厳しい現実に衝撃を受けた。

 DUでも、米国はがんなどの健康被害との因果関係をかたくなに否定する。「見えないところにこそ、本当に深刻な問題はある」。いつもの柔和な表情に強い決意がのぞく。神戸大教授で専攻は現代哲学。佐伯区で妻と暮らす。(滝川裕樹)


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