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続く紛争へ運動方針探る '06/8/7

 【解説】 この瞬間も続く紛争と核拡散阻止へ、被爆国から発信する核兵器廃絶の訴えが、どれだけ実効性を持ち得るのか―。原水禁系と原水協系の二つの原水爆禁止世界大会が六日、広島での日程を終えた。被爆者運動を担ってきた日本被団協の結成半世紀にあたる今年は、世界と足元の現状や課題を見据えながら運動の方向性を探る大会となった。

 両大会とも、核兵器保有を宣言した北朝鮮のミサイル発射や、泥沼化するイスラエルのレバノン空爆などへの非難が噴出した。しかし、問題の根は深い。こうした国々を国際社会が説得する際、単独行動主義と先制攻撃論に傾斜する超大国、米国の存在が、最大の障害になっているためだ。

 例えば、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が決裂した昨年以降、米国は、核開発問題でイランに圧力をかける一方、NPT非加盟のインドには、原子力技術の協力を決めた。相反する基準をちらつかせる米国への反発は強い。

 「米中枢同時テロ以降、世界は『ならず者国家』への核拡散防止ばかりに注目している。米国も含めた核軍縮に立ち返るべきだ」。原水協系の国際会議に出たマレーシアのシャールル・イクラム外務次官が、目指すべき方向性を言い当てる。

 こうした中、広島地裁が四日、原爆症認定集団訴訟の原告四十一人に全員勝訴という画期的な判決を出した。これを運動の柱と位置付けてきた原水協系は、関連行事を充実させた。

 原水禁系も昨年から、開会式共催にこぎ着けた原水禁国民会議と連合、核禁会議が共同で「国に控訴断念を求める」アピールを採択。原発へのスタンスや憲法九条の評価では溝もある三団体だが、「被爆者援護では結束できる」と強調する。

 「二度と原爆被害者を出してはならない」という老いた被爆者の願いを継承しつつ、認定訴訟にみられる世論の盛り上がりを新たな運動にどうつないでいくのか。爆発事故から二十年を迎えた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の被災者など世界のヒバクシャや、在外被爆者と連携しながら、運動のすそ野を広げる方策が一層求められている。(金崎由美、金刺大五)


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