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「氏名不詳者多数」名簿を奉納 '06/8/7

 ▽重み感じ7文字記す 元市職員池亀さん

 「氏名不詳者多数」。広島市は原爆死没者名簿に初めて記し、六日の平和記念式典で原爆慰霊碑に奉納した。今なお、名前が分からない犠牲者は少なくとも五万一千人。被爆者の元市職員の池亀和子さん(64)=南区=は、計り知れない「重み」を感じつつ、七文字を名簿につづった。

 秋葉市長と二人の遺族代表による名簿奉納。この一年間に死亡を確認、または届けのあった被爆者五千三百五十人分の三冊とともに、「氏名不詳者多数」とだけ記した一冊が慰霊碑に納められた。

 「筆先が震えました」。池亀さんは式典を自宅のテレビで見ながら、五日夕に刻んだ文字の「重み」を振り返った。

 達筆を買われて記帳を始めたのは一九八五年。三歳の時、西区観音にあった自宅付近で、ガラス片が体に突き刺さった被爆体験を持つ。「自分なりの供養」のつもりで続け、十七回目になった。これまで、自分の父を含め五万人近い名前を記した。

 その人数とほぼ同じ数の人の名前が今も分からない。「胸が締め付けられるような思いです」。七つの文字には、池亀さんの深い哀悼が込められている。(下久保聖司)


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