▽広島平和宣言 国際連携求める
広島市は6日、中区の平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。米国による原爆投下から68年。式典には約5万人が参列し、被爆地は犠牲者への追悼と平和への願いに包まれた。松井一実市長は平和宣言で原爆を「絶対悪」と断じ、核兵器の非人道性を訴える国際世論の高まりを受け、日本政府に廃絶を目指す国々と連携を強めるよう求めた。
式典は午前8時に始まり、松井市長と遺族代表2人が、原爆死没者名簿を原爆慰霊碑に納めた。この一年で亡くなったか、新たに死亡が確認されたのは5859人。名簿は2冊増え104冊、28万6818人になった。
原爆投下時刻の8時15分。遺族代表の大学職員佐古田史織さん(32)=安佐北区=とこども代表の袋町小6年伊藤麟太郎君(11)=中区=が突く「平和の鐘」の音が響く中、参列者は1分間の黙とうをささげた。
平和宣言で松井市長は、偏見や健康障害に苦しむ被爆者5人の体験談を引用し、原爆を「非人道兵器の極み」とあらためて否定。「被爆者の願いに応え、核兵器廃絶に取り組む原動力となる」と決意表明し、各国の指導者に「信頼と対話に基づく安全保障体制への転換」を要請した。
日本政府が核拡散防止条約(NPT)に未加盟の核兵器保有国インドと進める原子力協定交渉は、「核兵器廃絶の障害となりかねない」と懸念を示した。
こども代表による「平和への誓い」で、吉島東小6年竹内駿治君(11)=中区=と、口田小6年中森柚子(ゆず)さん(11)=安佐北区=が声を合わせ、「さあ、一緒に平和をつくりましょう。大切なバトンをつなぐために」と呼び掛けた。
安倍晋三首相はあいさつで「非核三原則を堅持し、核兵器廃絶と恒久平和の実現に力を惜しまない」と誓った。原発などエネルギー政策には言及しなかった。
各国来賓は70カ国と欧州連合(EU)の代表。核兵器保有5カ国では、中国を除く4カ国が参列した。
被爆者健康手帳を持つ国内外の被爆者はことし3月末現在、20万1779人。平均年齢は78・80歳と高齢化が進む。参列者の体調に配慮し、公園内の広島国際会議場に初めて参列者席を設け、式典の様子を中継した。(下久保聖司)
【写真説明】原爆慰霊碑に夜明け前から祈りの列が続いた。被爆68年。平和への願いは、合わせた小さな手に引き継がれる=6日午前5時15分(撮影・安部慶彦)




