主要3委 合意失敗
NPT会議が決裂
保有国と非同盟国 CTBTで対立
【ニューヨーク25日宮崎智三】国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議は二十五日(現地時間)、核軍縮がテーマの第一と、原子力の平和利用を話し合う第三の両主要委員会がともに、最終文書の基になる委員会報告案について合意できないまま討議を終えた。最終文書の採択は絶望的になり、会議は二十七日の最終日を待たずに事実上、決裂した。
二十四日に最終会合があった第二(拡散防止)も含め、三つの主要委員会すべてで合意形成に失敗。最終日にドゥアルテ議長(ブラジル)が声明を出す方法は残るが、個人的な取りまとめにとどまる可能性が強い。核軍縮が停滞し、核拡散の恐れが現実化するなかで、存在意義が問われていたNPT体制への信頼回復には、ほど遠い結末になりそうだ。
第一主要委員会は、米国が強く反対している包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効や、核兵器保有国が非保有国に核攻撃をしない「消極的安全保障」の法的拘束などをめぐって核保有国と非同盟諸国などが対立。委員長が示した論議内容の取りまとめ案を、「合意がない」との指摘を付けて起草委員会への報告書に添付することにした。
第三主要委員会は第二と同様、論議の総括を添付することにも中東諸国などから反対意見が出たため、形式的内容だけの報告となる。NPT第四条が「奪い得ない」と定めている平和利用の権利と、拡散防止の義務の順守とのバランスについて、非同盟諸国と西側諸国などとの主張が隔たったままだった。
前回(二〇〇〇年)の再検討会議は、核兵器廃絶への「明確な約束」を盛り込んだ最終文書を全会一致で採択し、画期的な成果を挙げた。しかし今回は、事前に議題も決まらず、今月二日の開幕後も二週間以上にわたり空転するなど異常事態が続き、実質討議の時間が決定的に不足した。
最終文書は5年に1度開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の合意事項を包括的に盛り込み、全会一致で採択される合意文書を指す。国際約束のため、一定の政治的な重みを持つ。議長声明や議長総括は、会議の討議内容を議長がまとめた文書。会議参加国の全会一致の合意を必要としないため拘束力がない上、討議を記録に残す形式的な意味合いが強い。
【解説】軍縮後退 歯止めならず
(2005.5.27)