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「合意」採択できず閉幕
国連総長は「遺憾」

 【ニューヨーク27日宮崎智三】イランや北朝鮮問題など核拡散の恐れが深刻化する中、国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、二十七日(現地時間)の本会議で形式的な内容の報告書を採択し、四週間の会期を終えて閉幕した。中東非核化などをめぐり参加国の意見が激しく対立し、審議内容を含んだ包括合意文書は採択できなかった。

 核兵器廃絶への「明確な約束」など画期的な最終文書を採択した前回(二〇〇〇年)とは対照的に、完全な失敗に終わった。成果のある文書を残せなかったのは一九九〇年の会議以来で、核軍縮の後退に歯止めをかけることもできず、世界の核状況に深刻な影響を及ぼしそうだ。

 国連のアナン事務総長は声明で「実質的な合意がなく大変遺憾に思う」とし、「NPTと、NPTに基づく広範な不拡散体制は、長期的に弱体化せざるを得ない」との懸念を示した。

 最終日は審議日程や参加国など形式的な中身の報告書を採択した。日本やカナダなど二十四カ国が発言し、多くは合意形成失敗に遺憾の意や強い失望感を表明した。ドゥアルテ議長は、審議内容に踏み込む声明は出さず、閉会あいさつで「条約が全加盟国から支持されているとの確信を強くした」と述べるにとどめた。

 二日開幕した会議は、議題などをめぐる空転が続き、実質討議の場となる主要委員会は予定より二週間遅れてスタート。時間不足もあり、非同盟諸国と米国などとの意見対立は最後まで埋まらなかった。被爆地広島から被爆者、市民ら約百人が参加し会議を傍聴したほか、秋葉忠利広島市長は四日に演説し、二〇二〇年までの核兵器廃絶を訴えた。

【解説】NPT体制 限界露呈

(2005.5.29)