NPT体制 限界露呈
加盟国対立に終始 被爆地の意志示す時
【解説】四週間もの会期を費やした結果、中身のある合意は何ら得られなかった。各国が主張を述べ合うだけの「トークショー」に終わった核拡散防止条約(NPT)再検討会議。NPT体制がそもそも内包する限界が、その信頼性を大きく損なう結果を招いたと言える。核兵器廃絶という被爆地の願いを実現するには、もはやNPTだけでは無力なことも、今回の会議は如実に示した=1面関連。(宮崎智三)
かねて指摘されるように、NPTの限界の一つが全会一致による意思決定の慣行だ。百九十近い加盟国の思惑が交錯する多国間交渉で、すべての国に「拒否権」がある。今回も、相手が譲らないとみるや態度を硬化させる場面が相次いだ。
それでもなお前回(二〇〇〇年)の再検討会議が成果を上げたのは、強い政治的意志で制約を乗り越えたから。インドとパキスタンの核実験(一九九八年)の後で、エジプトやメキシコなど七カ国からなる新アジェンダ連合(NAC)が大奮闘し、核保有国から核兵器廃絶への「明確な約束」を引き出した。
しかし、イランや北朝鮮など拡散問題に関心が集中した今回、NACはそれぞれの地域事情を背景に、一枚岩にはなれずじまい。被爆国日本の活躍に期待する向きもあったが、強い政治的意志と戦略、迫力に欠けたと言っていいだろう。何より大半の国が望んだ包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効で、同盟国米国の突出した拒否姿勢を変えられなかった。
NPTの「差別性」がもう一つの限界。米ロなど五カ国に核兵器の保有を認め、他の国には禁じる。非保有国の不満の源泉はここにある。事実上の保有国であるインド、パキスタン、イスラエルはNPTに加盟すらせず、北朝鮮は脱退した。
前回の会議で合意した「明確な約束」がほごになったわけではない。だが、核兵器廃絶を確実に進めるには、NPT以外の枠組みを模索するしかあるまい。平和市長会議が二〇二〇年までの核兵器廃絶を実現する方策として提案した核兵器禁止条約や、核兵器の臨戦態勢解除などがそれだ。被爆地が率先して戦略を練り上げ、強い意志で行動に移すときである。
「合意」採択できず閉幕
(2005.5.29)