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世界の中のヒロシマ

(9)戦争経験のない穏やかな人々辻本温史

マブガブティ?

アフリカはザンビアという国、南部の現地語で「おはよう、元気?」の意味です。

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任地の学校で授業をする筆者

辻本温史(つじもと・あつし)

滋賀県生まれ。大阪大文学部を経て、2004年に広島大大学院国際協力研究科入学、現在も在籍中。05年からザンビア南部のマザブカで青年海外協力隊員として学校で活動する傍(かたわ)ら、研究活動もしている。テーマは教育と文化について。

私は広島大学大学院国際協力研究科の学生ですが、青年海外協力隊に参加し、ザンビアでボランティア活動をしています。5年ほど前から国際協力機構(JICA)と広島大学が協力して、大学院生を学生のまま青年海外協力隊に参加できるようにしました。隊員として活動しながら研究活動も行い、帰国後に論文を書いて大学院を修了することができます。広島大学の国際貢献の一環でもあります。

私のザンビアでの仕事は教師です。8学年と9学年(中学2年生と3年生)に数学と理科を教えています。生徒は授業に、とても積極的です。勉強があまり得意ではありませんが。

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学校での生徒は明るく元気です。でも問題を抱えている生徒は少なくありません。放課後に家庭訪問に行って、さまざまな話を聞きました。親が亡くなっている生徒、両親が結婚していない生徒、親が仕事をしていない生徒、結婚して学校を辞める生徒、エイズウイルス(HIV)に感染している生徒…などなど。

そして、悲しむべきことですが、200人ほどしかいない8学年、9学年だけでも年に1人くらいが亡くなります。理由は落雷、交通事故、病気などです。つい先日も私が1年以上教えてきた生徒が水死しました。そんな厳しい環境にあっても、生徒たちは、ひとたび学校へ来れば多くの友達に囲まれ、ともに机を並べて勉強します。生徒にとって学校はとても楽しい場所なのです。

そんなザンビアですが、私が心から尊敬していることがあります。それは、「戦争を経験したことがない」ということです。植民地化される前も、されたときも、イギリスから独立したときでさえ戦争をしていませんし、多民族国家にもかかわらず内戦も経験していません。世界中を見渡しても、全く戦争をしたことのない国というのは珍しいと思います。ザンビア人は皆穏やか。キレるどころが、けんかや言い争いもほとんどしません。争いごとは穏やかな空気の中、常に話し合いで解決されます。私たち日本人も見習わなければなりませんね。