なぜここに生まれ暮らしているのか。なぜ父親がいないのか―。この子たちは知らない。
広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第五陣メンバーと、パキスタン国内にある二つのアフガニスタン難民キャンプを歩いた。
首都イスラマバード郊外のミスキーナバードキャンプと、ペシャワルの南西四十キロにあるシャムシャトーキャンプ。大国の政治的思惑にほんろうされ、内戦で荒れ果てた母国から、安心して暮らせる場を求めてやって来た多くの難民たちが、今も生活を営む。
アフガン国境から二十七キロに位置するシャムシャトーで、ヌール・ビビさん(40)宅を訪ねた。薄暗い部屋。泥まみれの子どもたち。ビビさんは、現在十三人目の子どもを妊娠中だという。近くのバールマさん(50)も、女性と子どもばかりの十二人暮らし。高熱の赤ちゃんが土の上の簡易寝具に寝かされていた。生活は子どもたちが担う。
このキャンプで学校を運営する地元非政府組織代表のショイブ・ハイダーさん(35)は今、職業訓練所を併設する計画をしている。「学校で学んでも職に就けなくては意味がないから…」
二つのキャンプで、子どもたちに将来なりたい職業を尋ねた。教員、医師、パイロット…。人の役に立ちたいという。汚れのない表情に触れ、メンバーとともにこの子たちの未来を思った。
(文・森田裕美 写真・山本誉)
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