新駅効果で「視界良好」
JR西日本広島支社が、都市型鉄道網構築を目指した「広島シティネットワーク」を構築して一年半。この間、新駅設置や結節改善など大きな成果を挙げている。また、「のぞみ」の増発や自由席の設定など、山陽新幹線全通以来といわれたダイヤ改正以後、利用者が七年ぶりに増加に転じている。同支社の近藤隆士支社長に、支社管内の現状や課題について聞いた。
(編集委員・山本浩司)
アストラム 利便性向上へ結節必要/横川駅改修 売り上げ増
新幹線が好調
―ダイヤ改正後、山陽新幹線はどう変わったのでしょうか。
改正した昨年十月から今年三月末まで、各月の売り上げは対前年103%を維持している。運賃を値下げしているので、利用客数はこれに1、2%上乗せした数字になる。特に新山口―首都圏間の利用者は30%も増えている。改正の効果はあったと判断している。
―理由は、どこにあると思われますか。
増発でのぞみが一時間に二本以上になった。広島―羽田間の航空便(二社合わせて十七往復=四月)より、格段に乗車機会は増えている。さらに一時間に一本、広島始発ののぞみを走らせ、自由席、指定席とも座れる可能性を高めたことが、支持されていると考える。
―ダイヤは、これで完成の域に達したのでしょうか。
完成したとは思っていない。例えば、早朝。広島発東京行きの一部の列車は、指定席が満席になることが多い。現在、岡山始発になっている列車を広島始発にするなどの改善が必要だろう。
―ほかに、どんな課題がありますか。
山陽新幹線の利便性をもっと多くの人に知ってもらわなくてはなわない。駅に張ったポスターは、鉄道を利用していただく方の目にしか留まらない。ほとんど利用しなかった方、利用したことがない方にこそ、アピールしなくてならない。市中にもっと出て行く努力が欠かせない。
開業初日5500人
―在来線では、三月に天神川駅が開業。利用状況はいかがですか。
初日の利用者は五千五百人。その後、ダイヤモンドシティ・ソレイユのソフトオープン期間中(三月十四―二十三日)は、一日平均九千三百人。二十四日の本オープンから四月七日までは同一万五千五百人。最高だったのは三月二十八日の二万千人―と、新駅としては順調なスタートだった。
―駅はダイヤモンドシティ・ソレイユのオープンをきかっけに誕生したのでしょうか。
広島―向洋駅間が四キロも離れていて、もともと駅が必要だと思っていた。そこにソレイユの開業が重なり、構想からわずか一年半で実現できた。一日に二百六十三本の列車が停車し、まさに都市型の駅だ。政令指定都市の玄関口駅の隣に新駅が開業するというのは、全国でもまれだろう。
―横川駅周辺の工事も完了しました。利用客などに変化はありますか。
路面電車とJRの結節は昨年三月に改善されていた。それでも完成した三月二十八日以降、同駅の自動券売機の売り上げは、7ポイント上昇した。
―「広島シティネットワーク」の取り組みは順調、ということでしょうか。
ネットワークは、待たずに乗れるダイヤ、機能とアクセスに優れた駅という三位一体の利便性を実現するために、まずわが社ができることをやろうと始めた。各方面の協力を得て着実に進んでいると思うが、まだまだ発展途上。ダイヤは、より便利にするために今年秋にも改善する。
―先ごろ、中国運輸局がアストラムラインとJR山陽線の結節駅設置について側面支援に乗り出すことを表明しました。
大変にありがたい。広島市や広島高速交通などとでつくる新駅設置の勉強会には、中国運輸局、中国地方整備局にも入っていただいている。ネットワーク充実のため結節駅は要ると考えている。弾みをつけたい。
―広島空港(広島県本郷町)への鉄道アクセスについては。
白市駅から空港までどう線路を敷設するか、列車のダイヤをどう設定するかなどのノウハウは喜んで提供したい。しかし、運営への参画は考えていない。
―ローカル線は、どのように考えますか。
都市への一極集中や少子高齢化による人口減少と自家用車の増加で、将来も山陰線や陰陽連絡のローカル線の利用者が増えるとは思えない。だからといって、やみくもに列車本数を減らすなどコスト削減に走ればいいというものでもない。何らかの施策が打てる可能性がある線区もある。
―それは、どんな施策ですか。
今年三月、山口線に快速「やまぐちライナー」を投入したのが良い例。昨年十月、宇部線での「のぞみリレー号」新設に続く、ローカル線での挑戦的な取り組みだった。「うまくいくかどうかわからないことは、まずやってみよう」という精神。各線それぞれに合った、きめ細かな対策をやってみて、それでも利用が増えないのなら、その後を考えるのが私の信条だ。
ローカル線 利用者発掘を
JR山陽新幹線と広島駅を中心にした在来線区間「広島シティネットワーク」は、ダイヤ改正やのぞみ停車駅の増加、快速増発、新設で利便性は大きく向上した。利用者増という数字に、その効果が現れている。
JR西日本の構造そのままに、新幹線と都市圏の在来線で上げた収益でローカル線を維持する広島支社としての今後の課題は、管内のローカル線の利用促進をどう図るかにある。
宇部線や山口線への快速の投入というこれまでなかった試みは、利用者の注目を集めている。山口線では、当初もくろんでいた新幹線との接続利用各以外の利用者発掘にも結びついている。
昨年十一月末で「大量安定輸送という鉄道の使命を終えた」と、可部線の一部区間が廃止されたことは記憶に新しい。当面廃止が検討されている線区はないが、新たな廃止線区を出さないためにも、自治体や利用者による「将来に向けての足の確保の方策論議」もまた、常に不可欠だろう。
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