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2005/1/30
JR春のダイヤ改正 広島支社 七川研二支社長に聞く

のぞみ充実使いやすく

 のぞみへのシフトが、さらに強まるJR山陽新幹線。在来線には、観光をにらんだ新たな臨時列車が走る。三月一日からのダイヤ改正を前に、改善のポイントをはじめ、課題の多い在来線の在り方やサービスの考え方などについて、JR西日本広島支社の七川研二支社長(51)に聞いた。

(編集委員・山本浩司)

増便や朝夕の重点運行も 在来線 観光客掘り起こす

 ―ダイヤ改正で山陽新幹線は、どう変わるのでしょうか。

 まず、広島駅では、これまで午前七時から午後六時までの間に、毎時二十八分か三十一分に博多発東京行きのぞみが発車した直後、四十分に広島始発の東京行きのぞみがスタートしていた。広島始発を毎時零分に改め、さらに増発することで、終日およそ三十分間隔で走らせる。ダイヤが接近し過ぎるという、JR西日本が発足して以来の課題が、ようやく解決できる。

700系を追加投入

 ―他の駅での改善は。

 徳山駅では、のぞみの発車時刻を昼間時間帯から早朝、夕方にシフトさせて、ビジネスやレジャーなどで、より利用しやすくする。新山口駅では、東京間を上下三往復増やして、計八往復となる。福山駅でも、東京間上下二往復を新たに停めることで、終日毎時一本の停車を実現できる。岡山駅では、七往復増やし、のぞみが毎時三本停車するようになる。

 ―こうした改正が可能になった背景は。

 新幹線車両の統一が進んだことが大きい。山陽区間では、車両性能(速度)に差がある0系、100系、300系、500系、700系が混在しているが、博多―東京間は700系と一部500系にほぼ統一できた。さらにダイヤ改正に合わせ、700系車両一編成が追加投入されることも大きい。

 ―二〇〇三年十月に、のぞみを大増発して自由席を設定、さらに料金値下げという大胆な改正をしました。今回の改正は考え方に違いがあるのでしょうか。

 一昨年の改正は、対首都圏間、つまり東海道・山陽新幹線をトータルに考えた改正だった。今回は、それを踏まえながら利用客のニーズに現時点で最大限応えた結果だ。

 ―今後の新幹線の在り方については、どのように考えますか。

 第一に、使っていただきやすいものにしなければならない。そのためには、利用状況を見ながら、停車駅の見直しも行われるべきであろう。しかし、最終的には本数をどう増やすかにかかっていると考えている。

 ―サービス面は。

 今後のサービスのあるべき姿を示してくれているのが、指定席の二列化、コンセントを備えたビジネスシート、そしてサイレンスカーを備えた、ひかりレールスターだ。ここで学んだことをのぞみにどう生かしていくかが大切だ。個人的には、のぞみ十六両の自由席、指定席、グリーン車、禁煙・喫煙席という今の区分けが、このままで良いのかと思っている。女性、ハンディキャップのある人たちのための車両区分が、将来誕生してもよいのではないだろうか。

自動改札も導入

 ―改正に合わせて、新幹線に自動改札機が導入されますね。

 当面の導入意義は、新幹線の通勤・通学利用者を中心に、乗り換えをスムーズにすることにある。同時に、将来のICカード導入に向けての第一歩という意味もある。首都・関西圏で進んでいるICカード・電子マネー化に、いずれ広島も収れんしていくと思っている。そのための助走でもある。

 ―好調な新幹線とは対照的に、在来線は過疎化、マイカーの普及などの面から、環境がますます厳しくなっています。

 まず、はっきりさせておかなくてはならないのは、現時点で廃止を検討している在来線はないということだ。そのうえで私は、在来線を周辺住民の方々のためにあるという、従来の視点以外の見方もあるのではないかと考える。

 ―それは、どういう見方ですか。

 簡単に言えば、地元の方々に加えて、観光客にも利用していただくというものだ。春には、呉線に「瀬戸内おさんぽ号」、新下関―東萩間に「萩・長門ブルーライナー」を走らせる。おさんぽ号にはスーパーサルーン「ゆめじ」を、ブルーライナーにはオープンカフェタイプの展望車付きの車両を投入する。ダイヤ上では「臨時列車」だが、実際に走るのは三月から六月までの長期間。これだけの長い期間、こうした車両を投入するのは初めての試みだ。

 ―期間中に、在来線の新たな可能性を探ろうというわけですね。

 この試みが、すべての路線で可能だとは思わない。しかし、鉄道事業者として、あらゆる可能性に挑戦したい。同じレールでできていても、路線それぞれの役割と活用方法には違いがあるのではないだろうか。取り組みがきっかけになって、路線の存在価値が上昇したり、地元の方々の見方に変化が生まれればと切に願う。

新駅資金が課題

 ―JR山陽線とアストラムラインの結節について、JR新駅設置の資金は地元負担というJR西日本の方針に変わりはありませんか。

 広島の都市交通の在り方として山陽線とアストラムラインがシームレスで結節することは有意義なことだと思う。しかし、JRの立場になれば、設置が必ずしも利用者増につながらないことも明らかだ。駅設置と結節に関する技術的検討は、支社内部で進んでいる。現時点で新駅設置のための唯一最大の課題は資金だ。

 ―今年秋には二十一年ぶりに広島がJRのデスティネーションキャンペーンの対象地域に選ばれますね。

 イベントの内容などについては、まだ固まっていないが、私は今回のキャンペーンは、わが社と広島双方にとって、将来を考えるいいきっかけにならねばならないと考えている。

 ―一過性のお祭りにしてはならないということですか。

 その通りだ。私の目から見て瀬戸の島々、食文化など、広島には埋もれた観光資源がたくさんある。これまで発掘しきれなかった、われわれにも反省点があるが、考えようによっては、まだまだ資源があるということだ。今回のキャンペーンをきっかけに、こうした資源を再発見し、今後十年、二十年かけて地域の宝物に育て上げていく取り組みこそがなされるべきだと考える。「あのキャンペーンがきっかけだった」と、将来思ってもらえるものにしたい。そのための努力は惜しまない。

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「ダイヤ改正や在来線活用策に、トライアンドエラーを恐れず挑戦する」と話す七川JR西日本広島支社長
 ななかわ・けんじ 1976年東京大学工学部土木工学科卒業。同年4月、日本国有鉄道入社。87年4月、西日本旅客鉄道鉄道事業本部施設部管理課副長。89年2月、総合企画本部経営管理室副室長。94年6月、岡山支社工務部長。95年6月、同支社次長。2001年10月、経営企画本部グループ経営推進室担当室長。04年6月23日から現職。熊本県出身。

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