2005.4.5
1. ネット活用 主婦が主催

大会準備メール駆使

 人気投票で決めた神楽団が舞台に上がり、好みの演目を心ゆくまで楽しめる。知らない神楽団や見どころなどの解説があり、ルールを守れば写真やビデオも撮り放題―。「そんな神楽大会が、夢だった」。東広島市の主婦井上由美さん(33)は初めて主催する神楽大会「神降る郷の舞あそび」のポスターを握りしめた。

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「あまり大会へ出場していなくても、魅力的な神楽団はけっこうある」。主催する大会への意気込みを語る井上さん

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 夢は五月一日、安芸高田市の甲田若者定住センターで実現する。「公演回数は少なくても地道に活動している神楽団を発掘し、後押ししたい」。ファン発の、神楽の活性化を促す試みでもある。

 井上さんが神楽に出会ったのは、二〇〇三年八月。家族で温泉へ入りに訪れた同市美土里町の神楽門前湯治村の定期公演だった。入浴後、どこからともなく太鼓の音が響いてきた。「何をしているか見たい」。何度も子どもたちにせがまれた。途中から会場に入り、中央の畳席で見た。

 化粧をした男性がかれんに舞う姫。徐々に勇ましくなり、鬼に変わってクライマックスへ。「格好良いの一言。神事のイメージが一変し、ノックアウトされた」。週末になると、神楽を見に出掛ける日々が始まった。

 「競演大会に出る神楽団は上手で、出ない団は下手だと思っていたが、実際はもっと奥が深かった」。神楽もうでは昨年だけで約五十回に及ぶ。秋祭りなどにも足を運び、大会に出場する団や演目がほぼ決まっている現状に気付いた。写真やビデオ撮影が禁止されたり、一団体の上演に時間制限があるなど、物足りなさも感じ始めた。

 五月の大会に向け、神楽写真などを発信する井上さんのホームページで知り合った約二十五人にアンケート。島根では有名だが、広島では上演の機会がなかった浜田市の後野神楽社中や、十歳代が団員の半数以上を占め、失敗を恐れず勢い良く舞う安芸高田市吉田町の高猿(たかざる)神楽団など、個性的な四つの出演団体を選んだ。

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 「インターネットがなければ、大会は夢のまた夢だった」。会社員や大学生などの仲間が、電子メールを駆使して大会準備やファンが楽しめる工夫、当日の流れなどを調整してきた。五百人の入場をめざす。「美しかったり、切なかったり、笑えたり―。普段は見られない神楽の世界に、ぜひ触れてほしい」。ファンの試みが、現状の神楽大会へ一石を投じる。


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