2005.10.13
1. 審査重視 大会で技向上

観客受け 新たな基準

 「審査の結果についてはいささかも異議不満を抱かず、円満裏に終了します」。一日、北広島町壬生の千代田総合体育館であった「芸石神楽競演大会」の開会式。約二千人が詰め掛けた会場に、高校野球ばりの「宣誓」がこだました。

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芸石神楽競演大会で、神楽団を代表して宣誓をする曙神楽団の田中団長

 舞台には、県内外の十神楽団の団長が、団名を記したプラカードを持って整列。最初に舞う地元の曙神楽団の田中正基団長(49)が、大倉三千男・大会長(69)に向かって宣誓書を読み上げた。「正々堂々と戦う気持ちを込めたが、違和感もあった」。田中団長は、複雑な思いを打ち明けた。

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 競演大会の結果は、以後にある各地の大会やイベントに呼ばれる回数などに影響する。その採点は、審査員が点数を付ける方式がほとんどだ。自慢の技を競うあまり審査をめぐり、神楽団や主催者の言い争いに発展するケースもあった。宣誓は「マナーを守り、切磋琢磨(せっさたくま)してもらう」ため、二十年近く続いている。

 芸石神楽大会では四人の審査員がそれぞれ、舞五十点、はやし三十点、口上十点、感動十点の計百点満点で審査。優勝、準優勝の差が一、二点という年も珍しくなく、神楽団は三十五分の制限時間ぎりぎりまで上演し、激戦を繰り広げる。

 一九四八年に始まった大会は今年で五十七回を迎え、これまでに十八団体が優勝した。大倉大会長は「失敗が許されないため、緊張感の中で、神楽団がしのぎを削ってきた」とレベルアップを促した役割を強調する。

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 しかし、ある審査員は「審査を意識しすぎると本来の神楽からずれてしまう」と憂える。一時間以上かかる演目を三十五分に短縮するケースもあり、大切な所作を省略せざるを得ない。競演向けの演目ばかりを練習し、団独特の演目が廃れる恐れがある―などの理由からだ。

 同町大朝の鳴滝露天温泉では九月、従来の競演から、審査をしない「共演」に転換して神楽大会を開いた。競演では登場しづらいこっけいな役柄が出演する演目を多めに並べ、人気だった。企画した同温泉の半田由里さん(43)は「息をのんで見るのもいいが、舞台と観客が一体になれる神楽本来の雰囲気を楽しんでもらえた」と胸を張る。

 十一月十二日に同町である近県選抜優秀神楽発表大会は初めてファン投票を導入し、順位を決める。主催する有田昭和会の居田正会長(69)は「観客に受けるか、という分かりやすい基準は、神楽団も納得しやすいはず。ひいきの神楽団があれば、こぞって応援に来てほしい」とPRする。

 戦後の神楽をリードしてきた競演大会が、個性化の時代に入ってきた。


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