支え合う関係 大切に
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「先代から伝えられてきた神楽の心意気を、次代に継ぐのが役目」と言い切る塚本会長
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―神楽の現状をどうみていますか。
高宮神楽連絡協議会長として何度か競演大会の審査に参加したが、地域の特色ある神楽がなくなってきている。優勝するために、よその神楽団の良い所取りをする風潮があり、本来の姿とは言えない。大会に出られる神楽団は固定化し、出られない大半の神楽団は後継者難に悩んでいる。郷土芸能といいながら、郷土よりも芸能が重視されすぎている。
―原田神楽団は数年前から、戦前から伝わる旧舞に取り組んでいます。なぜですか。
約三十年前、途絶えていた神楽を復活させた。若い団員が一丸となって練習し、競演大会で何度も優勝することで認めてもらえた印象もあった。ただ、振り返ったらどの演目も同じ舞、はやしになっていた。ファンにちやほやされる満足感が優先されていたのかもしれない。基本を見直し、原点に戻ろうと思った。
■ビジネス化は反対
―一方で神楽のビジネス化が進んでいます。どう思いますか。
郷土芸能を食い物にしてやろう、という動きには反対だ。神楽団が利用されている感じがする。イベントへ出るときも、神楽以外の出演団体と比べ、同じ金額で長く多く舞ってもらえる、という意図が見え見えの時が何度かあった。もうけ主義なら、ビジネスに見合った報酬を考えてほしい。
出演を名誉に思って商業路線に乗り、出演機会を増やして浮かび上がる神楽団もあるだろう。団を運営するため資金を稼ぐ必要もある。しかし、上司に頭を下げ、同僚に気遣いながら休暇を取り、家族との時間を犠牲にして出演依頼に応えているのが現状だ。どこかで無理が出てくる。
―神楽団はどう対応していくべきでしょうか。
名前を売り出すため、派手な演目や競演大会を目標に練習するのは仕方ない。それぞれの方針だから否定はできないが、しっかりどこかで線引きしないと、周囲に振り回されてしまう危険性がある。団員の中でも意見の相違はあるだろう。最後は団長がリーダーシップを発揮し、方向性を定める責任がある。
■地域育てる目線を
―神楽を次代に受け継ぐには何が必要ですか。
二〇〇三年、若い団員がバイクで交通事故を起こし、手術するのに血液が足りなくなった。うちの団員には対象者がおらず、旧美土里町の神楽団に相談したら、団員ら約百四十人が献血に駆け付けてくれた。神楽を通じた連帯感、きずなの深さが身に染みた。
地域のつながりが残っている農村だからこそ、神楽は成り立っている。先代から続く支え合いの関係を維持、継承する役割を自覚し続けたい。ファンをはじめ神楽を取り巻く方たちには、地域を育てる目線から支え続けてほしい。
安芸高田市高宮町在住。県無形民俗文化財である地元の原田神楽団で団長を務める。2004、05年の芸石神楽競演大会審査員。1997年から旧高宮町議2期、04年から安芸高田市議。
神楽ルネサンスは今回で終わります。
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