アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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アジア・アフリカからの報告 プロローグ
 
 米国のアイゼンハワー大統領が一九五三年十二月に国連で「平和のための原子力」を提唱し、原子力の平和利用が始まって半世紀。世界の原子力発電は二〇〇二年十二月末現在、三十一カ国・地域で四百三十六基に上る。最近は新設がほとんど途絶えた欧米に対し、経済発展が進むアジア・アフリカは増えており、日本の五十二基をはじめ百基に達した。だがその中にあって、脱原子力を目指す台湾のように原子力政策に変化の兆しも見え始めている。

 推 進

 韓国は国産化に力点
 日本に次いでアジア二番目の十八基が稼働する韓国。原発の合計出力は米国、フランス、日本、ロシア、ドイツに続いて世界六番目だ。東部にある蔚珍5、6号機が建設中のほか、八基の建設も計画され、これら十基が完成すれば、原発の全廃を決めたドイツを抜いて世界五番目の「原発大国」になる。
 原発の国産化にも積極的。出力百万キロワット級の韓国標準型原子炉を開発し、国内で生産。計画中の八基のうち四基は、百四十万キロワット級の次世代原子炉を採用する予定だ。

 中国、電力需要で増設
 中国は二〇〇二年末現在では六基だが、昨年二基が新たに稼働した。一号機は一九九四年の運転開始とまだ十年しかたっていないが、さらに三基を建設中で、二〇〇五年には二けたに増えて電力供給の3%を賄う計画だ。
 原発の合計出力は建設中の三基も含め九百万キロワット。年率8%以上の高い経済成長率で電力需要が増大しているのに伴い、二〇二〇年までに四千万―五千万キロワットへと大幅に引き上げる計画も掲げる。
 インドでは韓国に次ぐ十四基が稼働。出力が最大でも二十二万キロワットと小型が多いが、二〇〇八年までにもう八基が加わる予定だ。パキスタンでは二基のうち一基を中国の協力で建設し、さらにもう一基も同様にして建設することが決まっている。
 アフリカで唯一、原発を持つ南アフリカでは二基が稼働。現在は次世代原子炉で十万キロワット級の小型高温ガス炉(PBMR)の実用化を急いでおり、開発には英国原子燃料公社(BNFL)や米国で最多の原発を持つエクセロン社なども出資している。実用化すれば、クーバーグ原発敷地内に八基を建設する計画だ。

 新規立地

 核開発疑惑が持ち上がったイランでは、ペルシャ湾岸で初めてのブシェール1号機がロシアの協力で建設中だ。一九七〇年代にいったん、ドイツの協力で着工されたが、イラン革命やイラン・イラク戦争などで中断されていた。早ければ年末にも稼働が予定されている。
 ベトナムは東南アジア初の原発稼働を目指し、準備を進めている。中国に次ぐアジアの生産拠点として日本企業の進出などが相次ぎ、電力需要が増大しているためで、二〇一七年ごろをめどに1号機を稼働させようと、建設候補地も既に沿岸部三カ所に絞っている。

 撤 退

比、完成の目前で休止
 フィリピンではマルコス政権時代の一九七六年にバターン原発を着工した。だが、八六年にアキノ政権に交代したうえ、同年にチェルノブイリ原発事故も起き、安全性などに問題があるとされて98%まで完成しながら稼働されなかった。バターン原発はアジアで唯一、未運転の原発となっている。
 六基が稼働し、二基を建設中の台湾は二〇〇〇年に国民党から脱原子力を掲げる民進党へと政権交代し、将来は脱原子力を目指す「非核国家」政策を進めている。

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