アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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短期間では全廃できぬ
―行政院原子能委員会主任委員 欧陽敏盛氏

 第四原発をめぐる住民投票の行方や「非核国家」を実現する見通しは―。台湾の原子力行政のトップ、行政院原子能委員会主任委員の欧陽敏盛氏に聞いた。
 ―二〇〇〇年に民進党が政権を握って政策が大きく変わりましたね。
 国民党政府の時は原子力を非常に重視し、六基を運転し、第四原発の建設にも着手した。私は大学時代から民進党を支持しているが、今の政府は原子力の安全、放射性廃棄物の処理は非常に困難という立場に立つ。それで「非核国家」を推進している。
 ―政府は第四原発の建設をいったん中止したものの、結局、再開しました。なぜでしょうか。
 民進党内から第四原発をすぐ中止しようという主張が出たが、株価が下落するなど経済、政治に不安が出た。さらに国民党が多数を占める国会でこの方針が受け入れらず、混乱を招いた。それで両党は妥協し、再開することにした。結局、実際に再開できるまで六カ月もかかった。
 ―政府も原発を短期間に廃止することは難しいと見ているわけですね。
 その通り。今では原発廃止は困難が伴い、短期間で廃止するのは不可能だと考えている。だから第四原発の建設はストップしない代わりに、運転中の第一、第二原発などを早めに廃止したいと考えている。でも、国民党が反対していてそれもなかなか難しい。原発は発電コストが安く台湾経済に貢献しているからだ。
 現実的施策としては、当面は原発をうまく安全に運転し続け、同時にエネルギーを節約して再生可能エネルギーの発展も強化するしかない。台湾は資源がほとんどなく輸入に頼っているから、しばらくはエネルギー安定供給のために電力の20―30%程度の原子力を維持する方向が続くだろう。
 ―陳総統が表明した三月の住民投票で、第四原発の存廃はどんな結果になるとみていますか。
 これまでの世論調査から見て、恐らく工事継続という結果になる。民進党としても、今は必ずしも廃止しなければならないとは考えていない。ただ、住民投票は実施すること自体に意味があると考えている。ほかの政治的課題を問うことも含めて、民主化を進める重要なステップだと位置づけているからだ。
 ―今後、原発新設も難しくなる中で、どんなエネルギーで代替しようと考えていますか。
 私も原子力エンジニアの一人。個人的見解としては原子力に取って代われるような再生可能エネルギーを見つけるのは非常に難しいと思う。民意に従えば向こう二十―三十年は原発新設も難しいが、その間に第一、第二原発などが廃止されていけば電力供給問題が生じるため、新技術に基づいた原発を建設する可能性も出るだろう。だが、その時、民意がどんな選択をするか。それが台湾の原子力の将来のカギを握るだろう。




「今では民進党も原子力を短期間で廃止することは不可能だと考えている」
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