台湾の今後の原子力政策や日本との関係などについて、経済産業相に当たる経済部長などの要職を歴任し、現在は国会副議長である立法院副院長を務める江丙坤氏(国民党)に聞いた。
―政府はどのような原子力政策を進めているのでしょうか。
内閣に当たる行政院と立法院は二〇〇一年二月に第四原発の建設か中止かをめぐる論争を決着するため、将来は脱原子力を目指す「非核国家」という究極の目標に達することで合意した。行政院は今、「非核国家」に向けた法制システムをできるだけ早く築き、原発の合理的な取り壊しを企画している。
―第四原発をめぐる住民投票の実施もそのポイントの一つですね。
その通り。第四原発の建設をめぐっては、各界の人々の間で異なった意見がある。陳総統は、民主的なやり方での決定を見ることによって、論争の解消を図っている。弁論を通じて原発推進と反原発の意見が明らかにされ、双方の意見の衝突と矛盾を理性的に解消するわけだ。これは、社会の安定化を図るのに役立つ方法だと言ってよい。
―もし第四原発の建設が中止となった場合、将来の電力供給に不安は出ないのでしょうか。
結果が建設中止となるか、続行となるかは分からないが、電力自由化を進めて民間企業を参入させることで、経済や住民生活に十分な電力が供給できると考えられる。台湾への国際的な投資にも影響は出ないだろう。
いずれにせよ、政府は「非核国家」政策を進めるため今後、欧米先進国を参考に原発を適切に処理していく方針だ。欧州では運転中に廃炉にしたり、別の用途に転用されたケースがある。政府はそうした例をまねていくつもりだ。
―一方で放射性廃棄物の処分については依然、手付かずです。
地下に埋めたり、地表で保管したり、海面下の地中に埋めたりするなどいろいろ考えているが、どの方法を採用するにしても、住民や環境に影響を与えないようにしなくてはならない。立法院でも昨年六月には低レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定条例について審議しており、検討作業は始まっている。
―第四原発の主要機器は日本製が採用されました。今後も日本との関係は深まりそうですか。
わが国の原発の将来はまだどうなるか分からないが、現行のエネルギー政策の中では原発増設は最後の選択という位置付けであり、少なくとも二〇二〇年まで次の建設を考えることはない。そうなると今後、日本とは原子力より一般の発電で関係が深まるだろう。例えば電力自由化が進む中で日本企業は四カ所の天然ガスの発電所に投資し、風力発電でも三カ所で投資を準備している。電力全般で引き続き協力関係を期待している。
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倉庫の中で据え付けを待つ第4原発1号機の原子炉圧力容器。昨年6月に呉港から輸出された
(台北県貢寮郷) |
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