アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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国内頭打ち 輸出に活路
 
 産業界 核拡散防止に苦心

 日本の原子力産業界が「日の丸原発」の輸出に期待をかける背景には、一九九〇年代前半をピークに売り上げが減っている危機感がある。アジア市場への本格進出で打開を図っているが、「非核三原則」の下で核拡散防止に向けた制約も厳しく、ハードルは高い。
 日本原子力産業会議の「原子力産業実態調査」によると、二〇〇一年度(三百五十二社対象)の売上高は一兆七千五百一億円。ピークだった一九九二、九三年度の二兆二千億円台と比べて二割以上も減っている。
 今後の売り上げを左右する受注残高はさらに厳しい。二〇〇一年度末で一兆九千六百九十四億円と、ピークだった一九八八年度末の三兆八千三百億円と比べ半分の水準にとどまっている。
 こうした状況の中、九〇年代からアジア向け輸出が本格化している。第四原発向け以外では、三菱重工業が中国の秦山原発第一期1号機と第二期1号機にそれぞれ原子炉圧力容器を供給。日立製作所は第三期1号機向けに発電タービンを製造した。
 北朝鮮で軽水炉二基を建設する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の事業にも三菱重工業、日立製作所、東芝の三社が圧力容器や発電タービンなどの供給で参加している。ただ、北朝鮮の核開発の影響で昨年十二月から一年間の事業停止措置が取られ、再開の見通しは立っていない。
 日本は世界三位、アジアでは半分以上の原子炉を持つ「原発大国」。だが、米国やフランス、英国など欧米先進国と比べると輸出では大きく遅れを取ってきた。「非核三原則」によって輸出に厳しい制約が課せられているからである。
 政府は輸出を認める前提として、相手国の核拡散防止条約(NPT)の締結や二国間の原子力協定の締結などを求めている。相手国政府から@平和的な目的での使用A適切な核物質防護B国際原子力機関(IAEA)の保障措置の適用―などの保証が得られることを経済産業省の輸出許可の判断基準にしている。
 具体的には、原子力安全条約、原子力事故早期通報条約、廃棄物の海洋汚染防止条約(ロンドン条約)、原子力損害賠償に関するウィーン条約などの締結が条件。包括的核実験禁止条約(CTBT)を締結しているかどうかも大事な要素だ。
 だが、第四原発のケースでは、台湾と国交がないため二国間協定は締結できなかった。政府は結局、台湾関係法により特別な外交ルートを維持している米国国務省から「核設備と技術をいかなる核爆発目的にも使用しない」との口上書を取って輸出を許可した。
 だが、間接的に保証を取り付けたやり方に反発も根強い。台湾はNPTやIAEAから脱退。蒋経国総統時代には核開発を進めた経緯もあり、市民団体などは「非核三原則に抵触しているのではないか」と批判する。昨年六月に呉港から圧力容器が輸出された際も、反対運動が起きている。


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