アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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国民意識 啓発に努力
−韓国原子力文化財団専務理事 呉石堡氏

 原子力発電や放射性廃棄物に対する住民意識やPRなどについて、韓国原子力文化財団専務理事の呉石堡氏に聞いた。

 ―韓国では原子力について国民の意識はどうでしょうか。
 日本も同じだと思うが、韓国は資源に乏しく、一次エネルギー資源のうち96%が海外からの輸入だ。その状況の下で、安定したエネルギー供給のためには原子力に依存せざるを得ないことは、国民も現実問題として受け入れている。最近の世論調査では、原子力が必要という国民は84%で、危険だから反対するという人は11%にとどまる。

 ―原子力が必要という割合が高いですね。
 毎年の調査でもだいたいこの割合は変わっておらず、平均的な数字だ。だが、原発から出る放射性廃棄物については、原子力発電に対する意識とは異なっている。放射性廃棄物を安全に処分できると考えている人は41%に対し、安全でないという人が56%もいる。

 ―原子力発電と放射性廃棄物でなぜそんなに異なるのでしょうか。
 放射性廃棄物に否定的な理由としては、政府が過去に何度か処分場の候補地を決めようとして失敗した経緯がある。数年前には台湾が放射性廃棄物を北朝鮮に輸出しようと計画し、韓国の国民は反対せざるを得なかったことも影響し、放射性廃棄物に対する認識が否定的になった。最近は北朝鮮の核開発問題も起きており、その関連で反対の意識が高まっている。

 ―政府は昨年、蝟島を処分候補地に決めましたが、地元の反対が強く事実上、撤回されました。
 地域の住民や反原子力団体などが強く反対し、ほぼ一からやり直さないといけなくなっている。政府としては、住民との対話を通じていろいろ支援策も打ち出して合意してもらおうと考えていたのだが、政治や社会、環境問題などが複雑に絡み合ってしまった。反原子力団体の宣伝に惑わされた面もあるだろう。
 国民全体では、放射性廃棄物をどこかには処分しなければならないことで合意している。しかし、自分のところはだめだが、よそならいいという意識のギャップがあり、それがいまだ処分地が決まらない理由だ。

 ―住民意識を変えるため、どんな対策を取っているのですか。
 新しい方法として、住民参加で原発を監視する組織を霊光、古里原発の二カ所に設けたり、マスコミや地元のオピニオンリーダーに青森県やフランスなどの現地視察をしてもらっている。既に青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設を見て、反対から賛成へと意見を変えた人もいる。
 日本は韓国より古くから原子力を手掛け、国民の理解や知識の普及が進んでいる。韓国ではうちの組織ができてまだ十年ぐらい。まだまだやらなけれはならないことがたくさんあり、日本の経験を参考に、原子力の啓発に努力したい。




「自分のところはだめだが、よそならいいという意識のギャップがいまだ処分地が決まらない理由だ」と語る呉氏
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