アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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日本の技術提供を望む−原子力委員会委員 町末男氏

 中国の原子力政策やアジアに対する日本の技術協力などについて、国際原子力機関(IAEA)の元事務次長でアジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーターを務める原子力委員会委員の町末男氏に聞いた。

 ―中国の原子力政策をどう見ていますか。
 原発の建設を着実に進めている。電力供給はまだ石炭火力が中心だが、二酸化炭素を多く排出する地球温暖化の課題を抱え、価格が上がっている問題があり、原子力は今後の電力供給に不可欠だとの認識に立っている。

 ―昨年夏から深刻な電力不足に陥り、供給体制が間に合っていません。
 資金的な問題から、政府は原発の建設ペースを少し緩めたと聞いている。それは自国で原発のすべての部品を作れないため、建設コストが高くつくからだ。技術や資金面では、まだまだ外国の協力が欠かせない状況にある。
 今、中国にはさまざまな国の原子炉が混在しているが、既に出力三十万キロワットの原発を造る技術は持っている。最終的に国産化を目指していて、百万キロワットぐらいのものを造りたいのだが、まだ技術がない。だからその技術を何とか日本、あるいは先進国から移転してもらいたいという希望が強い。

 ―技術移転を進めれば将来、他の産業と同じく競争関係に転じる懸念もあるのでは。
 将来コンペティターになるということは非常に悩ましい問題。しかし、日本が技術移転しなければ、中国はフランスからもらったり、英国などから入れる可能性がある。そうすると両国関係にとってもマイナスだ。
 私は中国が欲しがったり、向こうにふさわしい技術は教えていくべきだと思う。その代わり日本は先端的な技術開発に力を入れ、中国がまだできないものを輸出していくべきだろう。

―アジア全体との技術協力は今、どのように進めていますか。
 私がコーディネーターを務めているFNCAは政府主導で原子力の平和利用を推進するために十四年前に設けられた。中国のほか韓国、フィリピンなど九カ国が参加し、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインド、パキスタンは入っていない。農業や医療など八分野十一プロジェクトが動いており、成果を上げている。

―日本は人材貢献が足りないと指摘されます。
 おっしゃる通り、日本は金を出しても人を出さないのが現実で、IAEAでも予算の20%を出しているのに正職員はわずか二十五人。発展途上国に対しても、現地に長期滞在して指導する人が少ない点を改善しなければならない。原子力発電が各国で盛んになれば、地球環境がよくなり、エネルギーのセキュリティー問題も解決される。それは回りまわって、日本の国益にもつながると考えている。




「日本が技術移転しなければ、中国はフランスからもらったり、英国などから入れる可能性がある」と語る町氏
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