需給の不均衡解消を急ぐ
中国は世界一の人口を抱え、電力生産でも米国に次ぐ世界第二の「電力大国」である。ただ、その主力はいまだ石炭火力と水力だ。その二つとも資源が内陸部の西部に集中し、電力需要は沿岸部の東部に偏っている。この地域的アンバランス解消のために、政府は西部の電力資源を開発して電力不足の東部に送る「西電東送」プロジェクトに取り組んでいる。
中国の発電設備容量は、二〇〇二年末現在で三億五千六百万キロワット。同年の発電電力量は一兆六千三百八十億キロワット時で、一九九〇年の三倍近い。改革・開放政策がスタートして間もない八〇年と比べると五倍以上に達している。
発電電力量の電源別の内訳は、81・8%が火力発電で、その九割以上を石炭が占めている。続いて水力発電が16・5%と高く、建設が進む原子力はまだ1・5%にとどまっている。
ここ数年の電力需要の伸びは著しい。一九九〇年代後半はアジア通貨危機などの影響から年率5%弱だったため、政府は第十次五カ年計画(二〇〇一―〇五年)の期間中は年率6%程度と見込んでいた。
だが、二〇〇一年は8・2%、〇二年は10・4%と予測を上回った。昨年はさらに15%程度の高水準になったもようだ。
こうした政府見通しと実際の需要とのギャップが広がっていることが、昨年夏以降の深刻な電力不足を招いた原因と指摘されている。国家発展・改革委員会によると、昨年の発電能力の不足は全国で一千万キロワットに上る。
このため、五カ年計画では当初、新規の電源開発プロジェクトは六千万―八千万キロワット規模としていたが、昨年八月の見直しで急きょ、三千万キロワットも上方修正された。
こうした中で、この五カ年計画から実施に移されているのが「西電東送」プロジェクトである。
貴州、雲南、四川、内蒙古、陜西など西部の各省・自治区は石炭が豊富で、川など水力発電向けに開発可能な資源の90%が集まっている。一方で、広東、江蘇、上海、北京など東部の七つの省・市だけで全国の電力の40%を消費。この地域的な電力需給のアンバランスが懸案だった。
その解消のために三つのラインを設けた。具体的には、北のラインは黄河の中・上流の水力発電や内蒙古などの火力発電で生産した電力を北京、天津、唐山地区へ送る。中のラインは四川、重慶、湖北の電力を上海、江蘇、浙江へ、南のラインでは雲南、貴州、広西から広東へ送電する仕組みである。
中国の電力網はかつて、冷戦時代の安全保障のため基本的に五つに分割されていた。「西電東送」プロジェクトを基盤に、二〇一〇年までには北、中、南の三地区の電力ネットワークが完成し、相互にリンクする。二〇二〇年までには全国で統一的な電力網に変わるという。
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