アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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国連と加盟国 役割重要
−IAEA対外関係・政策協力部長 ビルモス・セルベニー氏

 イランへの査察や原子力の平和利用などについて、IAEA対外関係・政策協力部長のビルモス・セルベニー氏に聞いた。

 ―イランがひそかにウラン濃縮計画を進めるなど核開発問題が持ち上がりました。
 北朝鮮についても同じことが言えるが、われわれIAEAは最終的に核兵器の保有という最悪の事態に陥らないよう、きちんとコントロールする責任がある。イランは平和利用が目的とは言いながら、一九八五年から違反を続けていたことを認めており、昨年秋の理事会で非難決議を採択。世界は今、イランに対し強い姿勢で臨んでいる。

 ―IAEAの査察には協力的なのでしょうか。
 これまでのところ査察は順調に進んでいる。イラン政府はさまざまな情報も提供しており、追加議定書に沿って協力的な動きをしている。原爆の材料になり得るウラン濃縮についても、既に自らストップし、今後も造らない約束をしている。ただし、査察が終わるまでまだ時間がかかる。

 ―各国で核開発問題が浮上し、NPT体制が崩壊しかねない状況です。
 まず、私は東欧のハンガリー出身であり、広島、長崎の悲劇を起こさないためIAEAで働くことを志望した。これまでにIAEAの力だけではNPT体制が守れないことも分かったし、国連とその加盟国の役割がますます重要になっている。

 イラクで核開発問題が起きた時、われわれは国連の安全保障理事会に報告して経済制裁措置を発動し、未然に防いだ。こうした問題では、安全保障と経済の二つの面を合わせ持たないと効果が薄い。将来は、違反が判明すればただちに強制的な措置や罰金を取れるような制度が必要だろう。

 ―原子力の平和利用が始まって半世紀ですが、核拡散や重大事故への懸念も抱え、原発の普及は当初の想定ほど広がらなかったのでは。
 確かに、アイゼンハワー大統領が「平和のための原子力」を提唱した一九五〇年代はいずれ世界中に原発が建設されるバラ色の考えが主流を占めたが、今は使う国と使わない国にはっきりと分かれている。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のような事態が再び起きると原発は生き残れなくなるだろう。だから、安全性の確保がなにより重要だ。先進国だろうと発展途上国だろうと、どこで起きても世界中に影響するため、IAEAとしても安全性の指導に最大限の努力をしている。

 ―原子力は将来ともエネルギーの基軸になり続けるのでしょうか。
 クリーンで環境に優しい点では、最も優れている。その点では当分、優位性は揺るがない。ただし、経済性と安全性がポイントであり、特に放射性廃棄物の処分問題がカギを握るだろう。原子力は発電だけでなく、農業や医療などでも利用できる幅広い技術。二十一世紀中にきっと課題は解決できると期待している。





「核開発を未然に防ぐためには、安全保障と経済の2つの面を合わせ持たないと効果が薄い」と語るセルベニー氏
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