アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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ウラン濃縮 極秘に実施

食い違う説明と事実

 イランやパキスタン、リビア、北朝鮮とアジア・アフリカ諸国で相次いで核開発・技術流出の問題が持ち上がり、その焦点となっているのがウラン濃縮技術だ。本来は原発で燃やす核燃料を製造するための技術だが、濃縮工程を繰り返せば原爆の材料に転用できる高濃縮ウランも生産できる。ウラン濃縮は平和利用と軍事利用の境界線をまたぐ極秘技術で、国際的な拡散を防ぐ仕組みづくりが急務となっている。
 世界で最も多く使われている軽水炉で燃やす核燃料には、核分裂しやすいウラン235が3―5%含まれている。だが、天然ウランのうちウラン235の含有量は0・7%しかなく、残る99・3%は核分裂しないウラン238だ。核燃料の製造にはウラン235の割合を高めてやる必要があり、これがウラン濃縮技術だ。
 その方法には、日本や英国などが採用している「遠心分離法」と米国やフランスなどが実施している「ガス拡散法」の二種類がある。このうち、イランやリビアなどで相次いで完成品や部品が見つかり、パキスタンのアブドル・カディル・カーン博士を中心とした「核の闇市場」が国際的な売買の仲介をしたといわれるのが「遠心分離法」の要になる遠心分離機だ。
 遠心分離機は、洗濯機の脱水槽と同じ原理である。気体状にした天然ウランを入れて音速の何倍もの超高速回転をさせると、軽いウラン235が内側、重いウラン238が外側にたまる。この内側にたまったウラン235の割合が高いガスを取り出してやるのがウラン濃縮の仕組みである。
 ただし、一回の濃縮工程ぐらいではウラン235の割合はほんのわずかしか高まらない。青森県六ケ所村にある日本原燃のウラン濃縮工場では、遠心分離機を数万台もつないでいるという。
 日本原燃では、非核三原則のため濃縮度が一定レベル以上にならないよう制限しているが、この制限をなくし、濃縮工程を限りなく繰り返していけば濃縮度が100%近くまで高められ、核兵器への転用が可能になる。このため、各国とも遠心分離機に関するデータは極秘事項にしている。
 IAEAの査察が入ったイランのナタンツにあるパイロット燃料濃縮工場(PFEP)では、昨年十一月までに約八百台の遠心分離機が設置されていた。計画では今年初めには千台規模に増強する予定だったという。
 昨年十二月に追加議定書に調印したイラン政府はIAEAに対し、PFEPでの遠心分離機の運転・実験を中止し、核物質の除去も約束している。イランはこれまで実施した遠心分離機の実験でウラン235の濃縮度は1・2%と説明しているが、濃縮度36%のウラン235が見つかっており、説明とは食い違いも見せている。
 かつて欧州のウラン濃縮会社で働いていたカーン博士のグループは極秘の遠心分離機の部品や技術をイランやリビアなどに提供してきたことが判明している。こうした状況が次々に明らかになる中で、IAEAは米国や英国、ロシア、中国、フランスの核保有五カ国や核実験をしたインドやパキスタン以外に、潜在的な核開発可能国が世界に三十カ国以上あるとみている。






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