日本からの報告 原子力を問う
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逆風 進まぬ立地 稼働延期や凍結も

  一九六六年に日本初の商業用原子炉である東海原発(茨城県)が稼働を始めて三十八年。国内の原発は今や五十二基、出力合計四千五百七十四万二千キロワットが稼働し、電力の三分の一を賄っている。だが、政府は長期エネルギー需給見通し(二〇〇一年策定)で一〇年度までに十―十三基を新たにつくる目標を掲げていたものの、現状では運転開始・発電するのは五基、六百十三万キロワットと半分以下の水準にとどまり、取り巻く環境の厳しさが浮き彫りになっている。

 ■建設中

 東京、関西、中国など北海道から沖縄までの電力十社と日本原子力発電、電源開発の電力卸二社は毎年三月末までに向こう十年間の電力需要見通しと発電所の建設予定を盛り込んだ供給計画を作成している。

 資源エネルギー庁がまとめた全国の〇四年度供給計画によると、政府の長期エネルギー需給見通しの区切りとなる一〇年度までに運転開始・発電するのは北海道電力の泊3号機(北海道)、東北電力の東通1号機(青森県)、東京電力の福島第一7号機(福島県)、中部電力の浜岡5号機(静岡県)、北陸電力の志賀2号機(石川県)の五基である。

 前年度の供給計画では東京電力の福島第一8号機(福島県)と中国電力の島根3号機(島根県)を含む七基が予定されていたが、二基の稼働時期がそれぞれ遅れて間に合わなくなった。島根3号機の場合、運転開始は一一年三月と一〇年度ぎりぎりだが、実際に発電として寄与し始めるのは一一年度からとなり、資源エネルギー庁のまとめでは一〇年度までの見通しから外れた。こうした稼働時期の延期は建設中・準備中の計十六基のうち十二基に及んでいる。

 五基のうち、建設が始まっているのは福島第一7号機を除く四基、四百七十五万キロワットである。東京電力では〇二年八月に発覚したトラブル隠し問題の影響で一時は所有する全十七基が停止。既存の原発の再稼働を優先しなければならない事情を抱えるため、一〇年十月運転開始予定の福島第一7号機は今後、稼働時期が遅れる可能性がある。

 ■準備中

 建設中の四基に続き、電力各社が建設を準備しているのは島根3号機や福島第一7号機を含めた十二基、千六百三十一万八千キロワット。うち七基は供給計画最終年度の一三年度までの運転開始を見込み、残る五基は一四年度以降の予定である。

 その中で、最多の四基の建設を予定しているのが東京電力である。東北電力が建設中の東通1号機のそばに二基を新設し、福島第一原発に二基を増設。計画通りすべて完成すれば、既存の十七基と合わせて計二十一基体制となる。

 中国電力は島根3号機を来年三月に着工。上関1、2号機(山口県)も合わせれば、東北電力と並び東京電力に次ぐ三基の建設を準備している。ただ、上関原発は未買収の用地が残り、継続中の裁判も抱えるなど、計画通りの遂行は厳しい情勢だ。

 東北電力では浪江・小高(福島県)が七三年に計画が打ち出されて以降、運転開始時期が二十回以上も延期されている。未買収用地がまだ一割程度残り、着工までこぎつけられるかどうか危ぶまれている。

 電源開発の大間(青森県)も難航を重ねてきた。当初はプルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を燃やす新型転換炉として計画されたが、特殊な構造で建設費が高くつくため電気事業連合会が反対し、一九九五年に軽水炉へと計画変更。さらに、炉心近くの用地買収ができず、炉心位置の変更も余儀なくされた。


 ■断念・凍結


 昨年十二月、二カ所の原発の新設計画が相次いで撤退に追い込まれ、供給計画から消えた。一つは関西、中部、北陸の三電力が計画していた珠洲原発で、もう一つが東北電力の巻原発である。

 珠洲原発は、七五年に地元の珠洲市が誘致表明。国の要対策重要電源にも指定され、二基を建設する計画だった。

 ところが、計画発表から間もない七九年に米スリーマイルアイランド原発事故、八六年には旧ソ連のチェルノブイリ原発事故が発生。地元の反対運動が高まる中で、八九年には関西電力が進めようとした立地可能性調査が阻止されるなど電力三社は身動きが取れず、二十八年たって地元に計画凍結を申し入れた。

 巻原発は八二年には原子炉設置許可申請が出ていたが、九六年の巻町の住民投票で反対が多数を占めて頓挫。さらに、建設予定地内の町有地が反対派住民に売却されたことについて推進派住民が提訴していたが、最高裁で推進派の敗訴が確定したため結局、東北電力は計画断念を決めた。

 このほかに計画が断念、撤回されたのはこの十年間でも、二〇〇〇年の中部電力の芦浜原発(三重県)、九七年の九州電力の串間原発(宮崎県)がある。中部電力は芦浜、珠洲と二カ所の原発の計画が行き詰まり、立地点は5号機が建設中の浜岡原発だけとなった。






北陸電力の志賀2号機。2006年3月の運転開始を目指して、工事の進ちょく率は8割を超えた(石川県志賀町)

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