日本からの報告 原子力を問う
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需要伸び悩みや自由化が背景に

 政府見通しの半分以下しか新増設計画が進んでいない原子力。背景には、地元の反対運動などのほか、電力需要の伸び悩みや電力自由化の進展など、新たな要素が加わっている。原子炉一基当たりの投資は約四千億円と巨額だ。経済性が厳しく問われる中、電力各社は計画推進に一段と慎重にならざるを得ない。

 資源エネルギー庁によると、二〇〇三年度(推定実績)の販売電力量は八千三百三十七億キロワット時で前年度比0・9%減り、八月にピークを迎える最大電力も一億六千三百九十八万キロワットで5・7%減少。冷夏の影響で大きくマイナスとなった。

 向こう十年間の電力需要も過去最低の伸び率だ。〇二年度から一三年度までの販売電力量は年平均で1・0%増。最大電力も0・9%しか伸びないと想定している。

 電力需要の伸び悩みから、計画が進まない現状でも電力供給への不安は少ない。一三年度の供給力は二億千二百八万キロワットで供給予備率10・2%と余裕を持って電力供給できる見通しとなっている。

 電力自由化の影響も次第に強まっている。四月から五百キロワット以上、来年度は五十キロワットへ拡大し、全体のほぼ六割が自由化。全面自由化も〇七年度から検討が始まる予定だ。

 このため全国で県庁舎や大学施設などが電力会社から新規参入事業者に移るケースが相次ぎ、中国地方でも広島県庁、広島市役所が中国電力から丸紅へ切り替わった。経済産業省の本庁舎も新規参入事業者が供給し、原子力推進母体である省庁が原子力を使わない皮肉な現象を生んでいる。

 こうした流れは新増設計画も直撃。昨年十二月に珠洲原発が凍結された際、関西、中部、北陸の三電力は珠洲市に対し「電力自由化で経営環境が厳しい」とその影響の大きさを理由に挙げた。

 原発は地元の合意形成や用地買収などに時間がかかり、現在は計画スタートから運転開始・発電までに二十年以上かかっている。巨額な初期投資を回収する時間まで含めれば半世紀に及ぶ息の長い事業となる。かつてのような右肩上がりの電力需要が期待できず、地域独占体制も崩れる中、電力会社は原発に対して厳しい経営判断を迫られる時代となった。





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