核燃サイクル 多角的に評価−原子力委員会委員長 近藤駿介氏に聞く |
原発 変わらぬ重要性
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「原子力をしぶしぶ受け入れているのが現状であり、原子力関係者の正念場だ」と語る近藤氏 |
原子力委員会は二十一日、原子力政策の基本となる次期原子力開発利用長期計画(長計)の策定会議をスタートさせた。焦点の核燃料サイクル政策の是非や原子力発電の位置付けなどについて近藤駿介委員長に聞いた。
―現状で最も課題と思われるのは。
原子力と不安がつながっていることだ。世論調査では、日本の資源状況とか地球温暖化対策などで原子力を使うのはやむを得ないと考えている人が七割を占める一方、不安に思う人も六、七割いる。原子力をしぶしぶ受け入れているのが現状であり、原子力関係者の正念場だ。
―何が原因でしょう。
だいたい原子力事業者を信頼していない。核兵器や事故への不安ではなく、どうも規制システム、事業者への信頼があてにならないという理由が多い。結局、リスクコミュニケーションと品質保証が大切。規制当局が経済産業省にあろうとなかろうと規制当局の顔が地域社会に見えるようにすることも重要だ。
―長計の策定では核燃料サイクルの見直しに関心が集まっています。
電気事業分科会での論議を引き継ぐ形になっているので、それはいたし方ない。ただ、私はこれまで何回も言ってきたが、単に再処理が高い、直接処分が安いというコスト論は既に済んだ話だ。
一九九五年にプルサーマルを始めようと決めた時、データを見て再処理は高くつくが、それでもさまざまな良い点があるからやりましょうとなった。現行の長計でも当然高いが、経済性に留意しつつやるのがいいとされた。高いからけしからんというのは論点でない。
―では、どんなポイントがありますか。
単にコストだけでなく環境対策とかエネルギーセキュリティーとか定量的評価が難しいものも合わせて、さまざまな価値観、評価基準をもって総合評価していきたい。基礎データとして当然コスト問題は出る。それを試算するプロセスで、いろいろほかの課題も見えてくる。そもそも原子力の是非を論議することだって構わないし、その議論の先に核燃料サイクルがある。再処理路線で高速増殖炉が今でも有力なのかどうか、チェックすることも大事なことだ。
―その高速増殖炉は行き詰まっていますね。
現行の長計では将来のエネルギー供給の有力な選択肢として研究開発に意味があるとされた。「もんじゅ」は裁判問題もあって遅れたが、これは頑張って動かす。ただ将来、実用化戦略を探る中で、どうしようもないとなれば、さよならになるかもしれない。まだその回答は出ていないし、地元理解を得て動かすことに最大限努力する。
―原発の建設が減る中で今後、原子力発電の位置付けが変わるのでは。
二〇一〇年までの需要想定は当初見込みより十基分減少する。需要が変われば供給も変わるのは当然だ。原子力は引き続き重要な位置を占めるし、原子力の時代はもう終わったというのは誤り。
総合的に検討する中で日本が第一にすべきことを考えたら、アジアのパワーバランスが変わる中で原子力でエネルギーセキュリティーを向上させるとか、地球温暖化への対応は原子力しかできないことがますます分かってきた。そうすると、今度の長計は現行のものと結果的に変わらなくなるじゃないか、という議論はある。
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