未来の日本 未来の世界 原子力を問う
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針路 国民的議論を
 
連載を終えて 

  日本の原子力の未来は、三つの課題に今後どう取り組むかにかかっている。@安全確保A原子力発電の位置づけB核燃料サイクル―である。
 安全については、一九九五年の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故、九九年の東海村臨界事故、二〇〇二年の東京電力のトラブル隠し問題と相次ぎ、「原子力の失われた十年」であった。共通する因子はモラル低下、組織の閉鎖性、知識の欠如などであり、まさに「人災」である。企業体質など根の深い背景も指摘され、解決に時間がかかるともいえる。
 国は昨年十月から維持基準の導入をはじめ、安全規制を強める方向で対策に乗り出している。だが、立地地域などから依然として不満がある。推進の旗を掲げる資源エネルギー庁と規制の原子力安全・保安院がともに経済産業省という一つ屋根の下にいる不自然さを指摘する人も多い。原子力発電の健全性確保の観点からも、米国のようにより独立した規制当局の在り方を探るべきだろう。
 原子力発電の位置づけについては当面、基幹電源の立場が続く。ドイツやスウェーデンなど脱原発政策の欧州諸国の例でも、現実に原発を停止させるとなると代替エネルギーに困っているのが実情である。地球温暖化防止を考えても原発の早急な廃止は厳しい。最近は中国などの大量の資源消費によって石油や石炭が高騰し、中東情勢の悪化もあってエネルギー安定供給の側面がより重要視されている。

 ただ、全国五十二基の原子炉は二〇二〇―三〇年ごろから順次、運転四十―五十年を迎え、廃炉時代に突入する。その代替電源を再び原子力に求めるかどうか、フランスのように再生可能エネルギーも含めた選択肢も検討に値する。電力自由化の進展や電力需要が下降に向かうことさえ想定される中、原子力発電の将来について関係者の突っ込んだ議論がほしい。
 現在、論議の焦点である核燃料サイクルの是非については理想と現実の相克といえる。資源小国の日本にとって核燃料サイクルの理想は正しい。だが、電気事業連合会が十八兆八千億円と試算したように巨額のコストを伴い、さらにこれだけでは済まないという見方もある。再処理せずに直接処分するワンススルー方式とのコスト比較などを通じて経済合理性を問う現実論もまた正しい。
 次期の原子力開発利用長期計画の策定ですべてのデータを包み隠さず出して検証してもらいたいが、早急な結論も避けてほしい。どちらにせよ、いったんスタートすれば後戻りは難しいだけに、原発立地地域をはじめ地方の意見をもっと吸い上げるべきだ。
 原子力政策全般について、今後は柔軟な姿勢が必要である。国はさまざまな選択肢を用意し、そのメリット、デメリットをすべて開示したうえで国民的議論へと昇華させる努力が求められる。


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