未来の日本 未来の世界 原子力を問う
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世界の提言
 
核拡散防止へ厳重監視 ― フランス原子力庁長官 アラン・ビュガ氏
  フランスでは昨年、全国でエネルギー政策をめぐる討論会が開かれた。その中で、現在は発電電力量のうち75%を占める原子力について、少し低減しなければならないということになった。  つまり、水力など再生可能エネルギーに少し道を譲るということである。現在は15%の比率の再生可能エネルギーを二〇一〇年には21%に上げることにしている。したがって原子力は65%前後へと比率が下がるだろう。
 ただし、新たな原子炉の建設は計画している。一〇年ごろフランスとドイツで共同開発した欧州加圧水型軽水炉(EPR)を一基建設し、一二年に稼働させる。現在ある最も古い原子炉は一九七七年の運転開始で、寿命が四十年とすれば、だいたい二〇二〇年ぐらいに取り替え時期を迎えるからだ。  日本では今、原子力発電の後処理(バックエンド)費用が論議されているようだが、フランスでは既に電気料金の中に再処理や最終処分、原子炉解体まですべての費用が含まれている。その上で欧州で最も安い電気料金を実現し、再処理をしても経済性が高いことを実証している。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分法については〇六年に科学的、技術的な成果が国に報告され、そこで方針を決めることにしている。これまで表層中間貯蔵や深地層処分などさまざまな処分方法の研究に取り組んでおり、私見では深地層処分が有力だと考えられる。高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にして埋めれば、もし周囲に水が流れ続けても一万年後でも厚さのうち千分の一がなくなるぐらいで、放射性物質が漏れ出す危険がほとんどないからだ。
 一方、最近はパキスタンのカーン博士の「核の闇市場」によってウラン濃縮技術が拡散する危機を招いているが、フランスでは四十年前から厳重に核物質や技術を監視。フランスからは一切、核開発技術が入手できないようにしている。
 イランに対しても英国やドイツとともにウラン濃縮の停止を求め、国際原子力機関(IAEA)と協力して世界の核拡散防止に取り組んでいる。広島、長崎への原爆投下は悲劇的な出来事で、それは今後、絶対にあってはならないからだ。



求められる良質な規制  ― 米国原子力規制委員会(NRC)委員長 ナイルズ・ディアス氏
 NRCは国内百三基の原子炉を監督し、その出力増強や運転期間の延長などの審査をしている。最近は原子力発電所の建設再開に向けて新しい原子炉の設計開発や準備が進んでおり、早期サイト設置許可や一括運転許可などといった新しい取り組みも始めている。  二十一世紀を迎えても原子力の将来は非常に明るい。技術開発が進み、ウラン燃料の供給は安定的で、環境にも配慮できるエネルギーだからだ。その中で規制の役割はますます重要だ。原子力発電の健全性と成長性を保つ上で、切っても切れない関係にあるためだ。
 米国における原子力の規制は今日、世界から評価されている。一九六〇年代から徐々に形づくられた運転実績型の規制アプローチであり、リスク情報に基づいている。
 具体的には、原子炉の多重防護という伝統的な安全性と、確率論的安全評価(PSA)を組み合わせている。PSAは、重大事故の芽となるトラブルの発生頻度や、本来働くべき安全装置が故障して動かない確率などの統計データを使い、重大事故の発生確率を定量的に評価する技術。運転実績に基づく知見とデータから成り立っている。

 その手法は既に確立されているものの、日々新たなニーズに合わせて更新しながら対応していく必要がある。そして原子力を将来とも利用していくには、強力かつ信頼できる規制当局の存在が不可欠である。
 ただ、規制の在り方は公共の福祉につながるものでないといけない。原子力は常に公衆の厳しい目にさらされており、人々のイメージはいまだ厳しいものがあるからだ。良い規制とは、量が少なく質が高い。悪い規制は数が多すぎ、守っているつもりで市場や事業者の自由を奪うものだ。
 今日、多数の人々がより高い水準の生活を望むようになり、貧しい暮らしを許容しなくなっている。これは、エネルギーを手ごろな価格で分配できれば解決できる問題であり、コストの安い原子力こそがその解決策になり得ると考えられる。その実現のためには事業者は常に安全を最優先に心掛けないといけない。効果的な安全が得られる時にのみ、国民からの信頼も得られるからだ。



国際協力で大規模発展  ― 中国核工業集団公司(CNNC)総経理 康日新氏
 今日の中国において原子力は国家経済の中で重要な位置を占めている。持続可能なエネルギー源であり、エネルギー供給を保証し、環境保護の役割も果たす基幹産業とされている。その政府方針の下で、CNNCは原子力開発を担当し、原子力発電所の主たる投資家として活動している。  中国の原子力開発は一九八〇年代からスタートした。現在は八基が運転中で、三基が建設中である。ただ、数年前までは世界的にも原子力を積極的に推進するような情勢になく、中国においても二〇〇〇年当時、発電電力量のうち原子力は1・2%にすぎなかった。
 だが、経済が急速に伸びて生活水準が向上し、電力需要が急増。八一年から二〇〇〇年までに国内総生産(GDP)が年平均9・7%伸びる中で、電力供給は年平均7・9%増にとどまり、電力不足に陥るようになった。そこで政府は最近、原子力発電の見通しを改定し、原子力は不可欠という結論に至った。
 政府は、二〇年までに電力設備全体を九億キロワットまで増やす目標を掲げている。その中で原子力は最もポテンシャルが高い電源の一つとして位置付けられ、全体の4%を担う計画だ。

 その達成には今後十六年間で二千七百万―三千万キロワット分(百万キロワット級原発で約三十基分)の原子炉を建設する必要がある。政府は原子力に対して積極的に位置付けを再調整したといえる。
 現在はフランスやカナダ、ロシアと協力しながら百万キロワット級原発を建設。国産技術でも三十万キロワット及び六十万キロワット級は建設可能になった。開発の焦点は軽水炉だが、高速増殖炉や高温ガス実験炉も手掛けている。将来、国産技術に依拠できる体制を構築するのが目的である。
 中国は今後、計画に即して積極的な原子力開発を進めるとともに、引き続き国産技術を向上させていく。同時に安全確保に努力し、発電コストも下げて競争力アップに努めるつもりだ。
 日本とは過去二十年間、政府や電力会社、メーカーとそれぞれ良好な関係を築いてきた。中国はこれから大規模な発展時代が到来する。その中で、世界各国と豊かな協力体制を確立したいと考えている。

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