広島県干潟 「人工」安定性欠く
広島県内の干潟は、海に流入する有機物のうち1割近くを浄化する能力を持つことが、広島県保健環境センター(広島市南区)の調査で分かった。水質を浄化する「天然ろ過器」としての機能に加え、水産資源の増殖に貢献するなど重要な役割も果たしており、同センターは干潟保全の重要性を指摘している。
清木徹・環境化学部総括研究員(57)らのグループが1993年から研究を進め、現地調査などを基に試算した。
干潟では、アサリやゴカイなどの底生生物、微細なバクテリアが有機物を分解している。研究グループは、面積が5ヘクタール以上ある県内の干潟53カ所、約750ヘクタールを対象に98〜2000年度、生物の種類や数などを調査。生物の呼吸速度や成長速度などから浄化能力を数値化する独自の計算式もつくった。
この結果を、県内の干潟総面積に換算すると、有機物の流入負荷に対する浄化能力は8・1%。海域別では、干潟の面積が約620ヘクタールと一番広い東部の浄化能力が最も高かった。
それに先立って着手した広島湾では、似島(広島市南区)の人工干潟、宮島(宮島町)の自然干潟、一部覆土した半自然干潟の3カ所を調査。湾内にある5ヘクタール以上の干潟19カ所、計169ヘクタールに換算した浄化能力は4・3〜1・2%とみている。
今回算出した浄化能力は河川などからの流入負荷が対象。栄養塩が植物プランクトンに取り込まれ、有機化する内部生産分は含まない。富栄養化が進む広島湾の場合、内部生産が90%を占める。
環境省の調査では、広島県内にある1ヘクタール以上の干潟は186カ所、計1024ヘクタール(90年度)で、それ以前の12年間で30カ所、計143ヘクタール減っていた。最近は人工干潟が増えている。
人工干潟も、アサリの稚貝放流などで一定の浄化機能が確保されているためか、浄化能力は自然干潟と大差なかった。しかし、砂泥の流出などで生物の生息が狭められるケースが多く、自然干潟に比べ、生息数は少なくなっている。
清木研究員は「干潟の浄化機能は重要だが、限界はある。窒素、リンの無機物の流入制限など河川を含めた総合的な環境改善が欠かせない」と強調。多様な生態系、水産資源の育成、憩いの場といった複合的な機能も重視し、「人工干潟は安定性に欠ける。造成するなら、自然に近づける工夫が必要」としている。
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