モデル手法づくり検討/新ビジネス創出期待
藻場、干潟など失われた良好な環境回復を目指す施策推進の原動力になったのは、瀬戸内法に基づく瀬戸内海環境保全基本計画の見直し(2000年12月)だった。港湾法や漁港漁場整備法など瀬戸内海にも関係する法律の基本計画、方針にも「自然環境の保全・再生」が盛り込まれた。今年1月、省庁を超え、総合的に展開する自然再生推進法も施行された。
■整備局と水産庁連携
中国地方整備局は今年4月、「瀬戸内海環境修復計画調査委員会」を設置した。修復事業で初めて水産庁と連携。生物の多様性、漁業資源の確保など総合的なモデル事業を盛り込んだ計画の年度内策定を目指す。
委員は行政、漁業者、土木や環境関係の研究者ら18人。瀬戸内海で実施された修復事業の成果や課題の点検作業も進める。
これまでに確認した主な事業は96件。水質の変化や生物の生息状況などを継続的にモニタリングをしているのはその6分の1にとどまる。事前、事後評価の内容、効果の試算方法もまちまちだったため、モデル的な手法、基準づくりも検討している。
委員長の岡田光正・広島大大学院工学研究科教授(55)は、最大の問題点として「修復事業の目的が不明確」と指摘。「どれだけの予算をかけ、どんな規模の、どんな事業をするのか。それが一般の合意が得られる範囲内なのか…。事業化までのプロセスも重視した手法を検討したい」と意気込む。
一方で、海の環境修復や自然再生は、新たなビジネスチャンスでもある。
■見本市に60団体出展
昨年11月に呉市で開かれた海洋環境産業見本市(呉地域海洋懇話会など主催)には、大学、企業など約60団体が出展し、2日間で約6000人が訪れた。公共事業のパイが縮む中、新たな成長分野として脚光を浴びる。中国経済産業局などの「循環型産業形成プロジェクト」でも本年度、瀬戸内海など閉鎖性水域の環境浄化、修復をテーマに取り組みを開始。海洋環境の産業創出を探るのが狙いである。
同局が産業技術総合研究所中国センター(呉市)と9月、広島市で開いた初のフォーラムには、定員180人に対し研究者や企業担当者280人の申し込みがあった。年度内にもう2回開き、各企業が持つ最先端技術の発表や情報を交換。産学官連携による研究会の立ち上げを目指す。
経済局循環型産業振興室の村上英夫課長(52)は「循環型社会へ時代が大きく動く中、環境は魅力的な分野。大学など研究機関との連携、企業の参入で、再生技術の向上にもつながる」と期待する。
■「開発の口実」避けて
産業技術総合研究所中国センターの総括研究員上嶋英機さん(59)は「自然修復の意義を含めて全体像を描き、経過の監視や技術的な評価までの総合的なシステムづくりが欠かせない」と指摘。「開発などの言い訳として利用せず、住民も関与できる維持管理も考える必要がある」と提案する。
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