竹原沖 底には岩石 一部で藻場回復も
広島県内での海砂採取が全面禁止されて5年8カ月。海底の経年変化をみるため、中国新聞社は5年半ぶりに2度目の海底撮影をした。許可量を大幅に超える違法採取が続いていた竹原市沖などの海底は依然、荒れていたが、一部では砂泥の集積がみられた。一方、採取に伴う海水の濁りがなくなり、藻場が一部回復するなど明るい兆しも確認できた。
海底撮影は4日、旧採取区域のうち、竹原、三原市沖で実施した。全面禁止から2カ月後の1998年4月に続いて2回目。前回と同様に、調査船から照明装置を備えたビデオカメラを海中に入れた。
竹原市沖の大久野島東側では、拳ほどの石が目立った。厚い砂の層が続き、好漁場でもあった大量採取前の状況とはほど遠い。三原市沖の高根島西側では、大きな岩盤が露出した個所も見受けられた。
県による海底地形の調査(98年度)では、大久野島東側の水深は40メートル前後。約40年間でほぼ2倍に掘り下げられていた。海底撮影に併せて水深の簡易計測も試みたがこちらも当時と大きな変化はみられなかった。
前回も同行した地元の元漁業者で、瀬戸内海海砂採取全面禁止同盟会世話人の吉田徳成さん(74)は「大量採取の傷はまだ深い」と肩を落とした。
ただし、前回の撮影時と厳密な比較はできないが、砂や泥がいくらか積もっている部分もあった。
産業技術総合研究所中国センター(呉市)の海洋資源環境研究部門などの研究グループによる現地調査では、潮流で砂が運ばれ、部分的に堆積(たいせき)していることが判明した。ただし、まだ個所、量とも限られている。
瀬戸内海は、地球規模での気候変動の中で海になり、海砂も約1万年とされる長い自然の営みによって堆積した。今後の地形的な回復について、研究グループは「採取量があまりにも多いため、数千年のオーダーでみる必要がある」としている。
一方、海砂採取などの影響で竹原、三原市沖の藻場が次々と消えていったが、ここ数年で相次いで復活していることが確認できた。
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