官民挙げ 調査・外敵防除
かつて山口県を代表するアサリ漁場だった岩国市沖合の干潟が危機的な状況に陥っている。年間漁獲量は4年前から実質ゼロ。地元漁協は休漁に追い込まれた。市は特産品だったアサリの資源回復を目指し、昨年度から激減の原因を究明するための調査、外敵の防除などが本格化。漁業者も加わり、官民が連携して漁場再生に取り組む。
最盛期は1980年代。漁獲量は年平均367トンだった。当時から市は、トラクターで干潟を耕し、砂をまくなどして漁場を整備。県内一の漁場を守っていた。
しかし、その後は減少傾向が続き、落ち込みが特に目立ち始めた95年から市は毎年、稚貝40トンの放流を始めた。漁業者も「再生の決め手」と期待したが、漁獲量は細るばかり。99年から統計上の数字はゼロになった。
この間、異常渇水やアサリを食べるツメタガイの大量発生、エイによる食害はあったものの、激減の詳しい原因は不明。市も漁業者も途方に暮れた。「稚貝をまけばいいと安易に受け止めていた面もある」との反省から、本格的な調査が始まった。
調査は、アサリの好漁場だった今津川、門前川河口の干潟で実施。エイを避けるための竹ぐいを25センチ間隔に立てたり、他の魚介類からアサリを守るネット(網目9ミリ)を張ったりして効果を確かめている。市によると、ネットを使っても稚貝の生存率はわずか3割。えさが不足し、死滅した可能性もあるとみている。
調査では、幼生にも着目。今年1月から毎月、海水を採取して浮遊状況を調べている。しかし、見つかった幼生は7月の1匹だけ。市水産振興課の武居順二課長(55)は「厳しい状態」と危機感を募らせる。半面、実態が次第につかめるようになり、「潮の流れを考えた放流方法など今後の対策のヒントにしたい」ともとらえる。
漁業者も調査や外敵の防除対策に加わり、一連の活動を通じて漁場管理の必要性を実感している。今津川アサリ共励会(62人)の広田悟会長(69)は「自分たちで漁場を守り、育てないと、アサリは戻らない」と考えるようになった。
市は、市民を巻き込んだ資源管理、海の環境改善を目指す。森と川と海のつながりを再認識してもらうため今年3月、初めて市民や漁業者に呼び掛けて上流部にコナラなどの広葉樹を植樹した。約180人が参加し、「思ったより関心が高いことが分かった」と武居課長。人が手を入れ、守り育てる里海づくりへの模索が始まろうとしている。 このページのTOPへ
|