中国新聞
2003.9.29

 「里海 いま・みらい」

アサリ漁獲量の減少の要因(推定)
(1)乱獲  一大産地だった東京湾で埋め立てが進み、品薄に。このため他産地で採貝が過熱した
(2)陸地側の変化
(ダム建設、河川改修、広葉樹林伐採)
 ▼浮泥の増加 ダムによる水量調整で流入する水と砂が少なくなり、泥化が進行。アサリの成育を妨げる浮泥が河口付近に増えてきた
 ▼海へ流入する養分の減少 アサリのえさになる植物性プランクトン「ケイソウ」の栄養源であるケイ素が、ダムで妨げられて海に出る量が減った。広葉樹林の落ち葉が分解されてできる有機物も栄養源になるが、河川改修で底や側面がコンクリート張りになると分解が進まない
 ▼土砂のたい積 大雨などで土砂が大量に流出し、殻長の3倍以上に積もると、はい上がれずに窒息死する
(3)埋め立て  ▼干潟の減少 生活の場の干潟や河口域が狭まり、過密状態によるえさ不足や、分散できず外敵の被害を受けやすくなった
 ▼潮流変化 潮流が変わり、幼生の着底経路が変わった
(4)水温の上昇  ▼溶存酸素量の減少(貧酸素水塊の発生) 夏場、貧酸素状態が数日続くと、酸素不足で生存できなくなる。温暖化の影響も
 ▼還元泥(硫化水素) 貧酸素水塊の発生により、泥の中のバクテリアが活動。硫化水素が生じ、濃度が高まると死んでしまう
 ▼塩分の上昇 温暖化の影響で水位が上昇し、塩分の高い外洋の海水が流入。生息域が狭まる
(5)外敵  ▼寄生虫 全国のほとんどの漁場で、へい死の要因になる可能性がある「パーキンサス原虫」の感染がみられる
 ▼食害生物 ツメタガイやエゾタマガイ、ナルトビエイ、放流量が増えているチヌなど多数
 ▼競合生物 粘り気のある足糸を出し、アサリを窒息させるホトトギスガイや、海底に穴を掘るアナジャコなど多数
(6)その他  ▼水質改善 リン、窒素の排出規制や下水道の整備などで、瀬戸内海の水質が改善されて栄養分が相対的に少なくなり、えさになる植物プランクトンも減った
 ▼のり養殖の衰退 冬場、北風で波の強い地域では、幼生はのり養殖網につく。養殖の衰退で網が減少