個性磨いてアピールを

週刊ベースボール編集長
柳本元晴さん(48)
=横浜市都筑区

 

  日本のプロ野球の将来や球界再編の論議に、日本中が燃えた昨年。地域と球団の「あるべき姿」としてメディアに取り上げられたのは、ファイターズの北海道であり、ホークスの福岡だった。
 「今の広島東洋カープと広島はお手本でなくなった。弱くて、観客が百万人切ってじゃあ、成功例に見えない」と故郷の球団には手厳しい。
 「ただ『地域密着』も簡単じゃない。新鮮味がなくなったときどうか」と、ファイターズや楽天イーグルスの先行きを案じる。老舗の野球専門誌編集長も、プロ野球の将来像を描きあぐねるのは、ファンがメジャーの魅力を知ったからだ。
 地域と球団のきずなを強める意味でも、「チームが勝つことが一番」と力を込める。「楽しい球場にする工夫は大事。でも、器だけでお客さんを集めるのは限界がある」。新球場構想の成功は、カープ再生と切り離せないというのである。
 昔のカープは理想に近かったと懐かしがる。「トラブルも含めて、お客が熱かった。『広島のタクシーでカープの悪口を言ったら怒鳴られる』みたいな都市伝説が生きてましたよね」
 選手に個性があり、野球に特徴があった。機動力を生かし、守る広島野球のイメージは、広島商の高校野球からつながっていたという。
 この十年のカープは、個性派選手がフリーエージェント(FA)で出て行くばかり。高校野球もかつての勢いはなく、「広島野球の姿が見えなくなった」と嘆く。今のカープの選手を見て気になることがある。「妙によそ行きで、おとなしい。負けても悔しくなさそうで、勝ってもさほどうれしくなさそう」。表現力を磨くのもプロの大切な仕事と言い切る。
 高校時代まで、市民球場に行こうと思い立つと、外木場投手の先発の日を狙った。「大竹、河内は大投手になる可能性を持つ希望の星。『この選手を見たい』と思わせるアピールも必要」。さまざまな手段で、発信力を高めてほしいと願う。

【写真説明】「選手も球団もアピールが足りない。人を引きつける工夫も大事」と話す柳本さん(東京都千代田区の週刊ベースボール編集部)

やなもと・もとはる
 広島市中区出身。修道中、高と野球部に在籍し、高2の夏は県大会ベスト8、投手で4番の主将として臨んだ3年夏は2回戦で敗退した。99年から現職。

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