ファンの思いを前面に

コラムニスト
神足裕司さん(47)
=川崎市宮前区

 

   レギュラー出演する中国放送の経済情報番組「Eタウン」で、新球場問題は主要テーマの一つである。これまでに特集で十二回取り上げた。視聴者の反響も大きい。「たる募金」賛同人の就任も快諾した。
 「現在地・オープン」の実現に向け、官民の足並みがやっとそろったかに見える。しかし、JR貨物ヤード跡地(広島市南区)のボールパーク計画が白紙に戻った経緯を知るだけに、「ホンマに進むんかいな」とまだ懐疑的だ。
 気にかかるのは、故郷広島の「飢餓感」のなさだ。一度球団を失った福岡のホークス、何にもなかった新潟のサッカー・アルビレックス…。「日本人のほとんどが巨人ファンの中で、よくぞ広島にカープがあった。この歴史は買えないから、絶対にカープをなくしちゃ駄目」と力を込める。
 実現のための鍵を二つ挙げる。一つは「もうけよう」という欲を持つ若い人のアイデア。「何が面白いか実感のある三十歳代」が、投資家を集め利益を上げるモデルをつくれるかどうか。この先、資金調達で難渋するのが見えているからだ。
 もう一つは世論だ。
 ネット技術を持つ楽天などの参入で、球界はテレビ中継に依拠した巨人中心、全国画一のスタイルから、「地域発信」へ姿を変えるとみる。
 そんな時代、広島は強力な武器を持つ。「チラシの裏にスコア付けながら野球中継を見る人間がいて、街中で野球の話ができる都市なんてないですよ」。行政や経済界だけに頼んでいたら、内輪もめや主導権争いに失望させられる。一徹なファンが立ち上がり、政財界を引っ張る構図を描く。
 週末の帰省が習慣となり、修道高の同級生と一献傾ける機会も増えた。「地域、地域って、やつらすごく言うんですよ。僕は川崎に住んでるけど、川崎のことを考えようっていう気にはならない。ちょっとうらやましい」と照れ笑いした。

【写真説明】「新球場建設へ向けての一歩一歩が、目に見える仕組みをつくりたいですね」と語る神足さん(広島市中区の中国放送)

こうたり・ゆうじ
 広島市西区出身。大学時代から執筆を始め(金)(ビ)を生んだ「金魂巻」が出世作。レギュラーの仕事は、TBSラジオ「アクセス」、週刊SPA!「これは事件だ」など。映画「六月の蛇」に主演するなど俳優業も。

特集TOP | BACK | NEXT

TOP