現球場の雰囲気残して

若手お笑いコンビ
アンガールズ

 

 ひょろひょろと背が高い二人が、奇妙な動きと独特のテンポでコントを繰り出す。オチなのかなと考えているうちに、「ジャンガ、ジャンガ、ジャンガ、ジャーン」と両手を交差させる決めのポーズでけむに巻く。
 「脱力系」の笑いで人気を集める田中卓志さん(29)と山根良顕さん(28)は、イベントやテレビ番組で、たる募金を「いま一番気になる」とPRしている。大学卒業まで、広島で過ごして生まれたカープへの愛着からだ。初の単独ライブを収録したDVDのタイトル「88」は、山本浩二監督の背番号「8」にちなんで名付けた。
 「実は、初デートが広島市民球場。高校一年の時、グループ交際で。結局、男友達とだけしゃべっただけで終わっちゃいました」と山根さん。旧上下町に住んでいた田中さんにとって市民球場での観戦は一大イベント。「初めて行ったのは、小学三年の時。大洋(現横浜)戦だった」。思い出は、今も鮮明だ。
 大学時代は、ともにアルバイトで市民球場へ通った。田中さんはジュースを売り、山根さんは切符の「もぎり」をしていた。選手との近さ、土や芝のにおい、スコアボード裏で食べるカープうどん…。すべてが好きだ。
 だからこそ、新球場建設に向けた輪の広がりを喜びつつ、現球場の雰囲気は残してほしいとも願う。「芝生とかを良くして選手に優しい球場を」(田中さん)「本音を言えば、改修すれば今のままでもいい。あんまり変わるとショックだし…。今の球場の良さを引き継いで」(山根さん)
 七年連続Bクラスと成績が振るわないこともあって、昨シーズンまでのスタンドは寂しい限り。「カープはずっと(広島に)あるもんだ、と思ってるから、球場へ行かない」と山根さんは指摘。田中さんは「弱いと、行きづらくなるのかな。負けちゃうんじゃないかって」。そして「優勝を見たい」と力を込めた。巨人戦三連勝の滑り出しに今季は、期待が膨らむ。
 二人は売れる前、なけなしのお金をはたいて年二、三回、神宮球場のカープ戦に足を運んだ。「レフト席を埋めるファンを見て、泣きそうになった」。広島とのきずなを求めていたのかもしれない。だから、古里にエールを送る。「みんな球場に行きましょう」

【写真説明】決めのポーズで「みんな球場に行きましょう」と呼び掛けるアンガールズの山根さん(左)と田中さん(東京・表参道の所属事務所)

たなか・たくし=府中市出身、広島大卒。
やまね・よしあき=広島市安佐南区出身、広島修道大卒。
大学時代に旅行サークルで出会う。卒業と同時に「お笑いをやりたい」と上京し、2000年9月にアンガールズを結成。DVD「88」と前作「ナタリー」はいずれも3万枚を超す大ヒットを記録。独特の間については、「早くしゃべれないから」(田中さん)「頭の中で広島弁を標準語にしてから話すので時間がかかる」(山根さん)という。

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