若手の頑張り見たい

マラソン選手
松宮祐行さん(25)
=東京都八王子市

 

 秋田県で生まれ育った双子の長距離ランナーの弟。レースや合宿の合間に、首都圏で広島東洋カープの試合に通う。「北海道合宿の帰りに、横浜スタジアムへ直行したこともある。練習バッグにメガホン入れて…」。今季開幕直後に「はがき二十枚出して当てた」という、野村謙二郎選手の2000安打カウントダウンTシャツは宝物だ。
 一卵性双生児の兄・隆行選手と容姿はうり二つ。子どものころ、着る物は色違いだった。「帽子も兄が巨人の黒で、僕は赤」。少年時代は、両親に買ってもらった「カープ帽」が宝物だった。  広島対巨人のテレビ中継は、当然のように兄弟げんかの舞台となった。「互いに、同じ帽子で頑張る選手を応援するから」。小学校では野球部に所属した。周りのすべてが巨人ファン。それでもただ一人、カープの赤い帽子でプレーを続けた。
 中学から陸上競技に打ち込み、花輪高卒業後は兄弟そろって実業団のコニカミノルタ(当時コニカ)に入社した。上京二年目に、神宮球場の左翼席で初めて生の試合を観戦した。「臨場感は最高。(立ったり、座ったりの)スクワット応援も楽しくって」と病みつきに。今では選手一人一人の応援歌を、ほとんどそらで歌える。チーム内にカープ党を増やし、いつしか兄も染まった。
 合宿先などでは、スポーツ新聞をこまめにチェックする。「観客数」にも目がいくという。「広島市民球場で八千人とかだとがっかり。関東でのゲームは左翼席がいっぱいなんだけど」と不思議そう。二〇〇〇年のひろしま男子駅伝に出場し、広島市民球場を見た。「古ぼけた感じだった。新しい球場ができ、男子駅伝の沿道のように盛り上がればいいのに」と願う。
 カープのチーム状態に、思うところもある。「若手がもっと必死にならないと。底上げがないと勢いが生まれないのは、駅伝も野球も一緒」とみる。ここ五年間で四度、全日本実業団駅伝を制したトップチームにいるだけに、指摘は鋭い。
 〇八年北京五輪のマラソン代表を目指す若手ホープ。カープファンとして、別の夢もある。「メダルを取って、新球場での始球式に呼んでもらいたい」と真顔で言う。「僕が地方出身だからですかねえ。カープには同じにおいを感じるんです。子どもの時、買ってもらったのが赤い帽子で本当によかった」


【写真説明】「もし中国電力に入社していたら、練習そっちのけで球場に通い詰めてしまう」という松宮祐選手(右)(6月5日の日本選手権男子一万メートル)

まつみや・ゆうこう
 元日の全日本実業団駅伝は、双子の兄・隆行とともにコニカミノルタの2年ぶり4度目の優勝に貢献。3月のびわ湖毎日マラソンは2時間9分18秒で日本人3位となり、8月のヘルシンキ世界選手権代表の補欠となった。

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