タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 4  平和記念公園

    ■ 夜は怖い ■
      犯罪多発 人拒む闇


写真
監視カメラが24時間見張る原爆の子の像(左)と折り鶴台(広島市中区、平和記念公園)

■観光・防犯の議論遅れる

 監視用ビデオ撮影中―。平和記念公園(広島市中区)の原爆の子の像の周りに無粋な看板が並ぶ。カメラの稼働は当初、夜間から早朝にかけてだった。が、折り鶴台に火が放たれた昨年八月以降、訪れる人たちに四六時中目を光らせる。

街灯を点検へ

 市民だけでなく、国内外の人たちが大切に思う平和記念公園。広島中央署によると、公園内で起きた犯罪は過去五年間で百二十を数える。原爆ドームや慰霊碑へのいたずら、ひったくり…。それ以前は、殺人や少年グループによる「おやじ狩り」も起きている。

 「とても言いにくいんですが、お客さまに勧める散策スポットのリストには入れてません。ものすごく暗いし…」。ドームまで歩いて五分のリーガロイヤルホテル広島総支配人室、栗原久子さん(29)が打ち明ける。

 夜の公園が暗いことは、管理する市も認めている。二年前に実施した公園一帯の将来像を探る市民アンケートで、平和記念公園の悪い点を尋ねた。選択肢には「夜間は暗い」を盛り込んだ。結果は、「駐車場がない」「長時間過ごせる参加型施設がない」に次ぐワースト3だった。

 市は本年度、防犯対策として公園内を明るくするために、約百二十基ある街灯を点検する。二百ワットの電球の明るさを上げたり、明かりを遮る木の枝打ちをしたり…。足りなければ、来年度以降の増設も視野に入れているという。

 とはいえ、「慰霊地は、決してにぎわいの場ではない。人を呼び込む目的で積極的に明るくする計画はない」と市緑化推進部は言う。

 冬の都心を電飾で彩る「ひろしまドリミネーション」は二年前から本格化し、師走の街の風景になりつつある。舞台は、本通り商店街や平和大通り。平和記念公園は蚊帳の外だ。

監視カメラ増

 事業に携わる市の外郭団体、広島観光コンベンションビューローの田中達也さん(32)も「公園内での『奇抜』や『目立つ』はご法度との思い込みがある。それに、規制に縛られ、重みで頭を押さえ付けられた感じもして、正直言って使いづらい」と漏らす。

 公園の監視カメラの存在が注目されたのは、いたずらが相次ぎ、ドームそばに設置された二〇〇二年だった。しかし実際は、一九九四年に原爆資料館に設けたのが始まり。その後は増え続けている。市は防犯上、どこに、何基あるかは明かさない。

 夜の観光や防犯を含めた総合的な議論は、市内部でもこれまで十分にはなされていない。理由を関係者に聞いても、「平和公園はお墓でもある。夜は静かに」との言葉が返ってくるだけだ。

 こんな現状を、日本被団協代表委員の坪井直さん(78)はひたすら嘆く。「人目があれば、カメラなんかいらんでしょう。あれはダメ、これはダメと枠をはめるうち、人が寄り付かん、物騒な場所になってしもうた。情けないことです」

 世界的に有名な「ピース・パーク」は、夜のそぞろ歩きなどとんでもない。平和記念公園は全然平和じゃない顔も持つ。

2004.4.22