タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 4  平和記念公園

    ■ もてなし ■
      休憩場・食堂少なく


写真
公園内で、観光案内、土産物販売、休憩の機能を担うレストハウス。「分かりにくい」との指摘は多い

祈り前面 なおざり気味

 岩国市の児玉文子さん(61)のもとに昨夏、長野県に住む小学生と幼稚園児の孫がやってきた。父を原爆で亡くした児玉さんは、広島市中区の平和記念公園に連れて行った。二人は原爆資料館で展示を熱心に見入った。

夏はぐったり

 外へ出ると、疲れと暑さでぐったり。「座りたい、冷たい物がのみたいとぐずりだして。子連れで気軽に休める場所が少ないですよね」。多少土地勘のある児玉さんも、ほとほと困ったという。

 公園内で食事ができる施設は、広島国際会議場のレストランだけ。リーガロイヤルホテル広島がテナントとして入居する。地下二階で、独立した看板もない。「こんな所にあったのねと、よく言われる」とマネジャーの松岡優子さん(32)。

のぼりに苦情

 基本設計の段階ではガラス張りの一階に喫茶があったが、全体の見直しの余波で立ち消えに。検討の過程を見ると、飲食部門はあくまでも会議場利用者のためであり、公園に来る人へのもてなしの視点はうかがえない。

 元安橋に近い被爆建物レストハウスは、市の外郭団体、広島観光コンベンションビューローが運営する。百二十平方メートル足らずのフロアに、観光案内、土産物販売、休憩の三つの性格を併せ持つ。

 ここで昨夏から生花を売り始めた。碑に手向けたいという要望に応えた。メディアでも取り上げられ、市の施策評価のホームページでは、「達成」を意味する「晴れ」マークがついている。

 しかし売り上げは、昨年八月の三百十五束をピークに低迷。十二月以降は月に四十〜二十束しか売れていない。

 「あそこに花があるのも知られてないし、だいたいレストハウスが何かわからん人が多い」と花を納める山口晴司さん(62)。生花商の組合の役員を務める立場もあり、ボランティアのつもりで安佐南区の店から運ぶ。

 レストハウスはかつて、土産物をPRするのぼりを屋外に立てたことがある。すぐに「聖地で商売とは何事か」と抗議を受け、引っ込めた。建物にも看板はない。

 内外の戦争遺跡や著名人の墓地周辺では、屋台などでかわいい花束を売る光景は珍しくない。資料館やドームでヒロシマに共感し、その思いを何かの形で表したい人は確実にいる。「何か工夫はできませんかねえ」。山口さんはもどかしい。

観光化抵抗も

 「平和記念公園と観光を結びつけるのに抵抗を感じる」という観光関係者は多い。「観光」という言葉が物見遊山を連想し、祈りの場にふさわしくないイメージがあるというのだ。その結果、広島で最も有名な場所の「もてなし」がなおざりになった観は否めない。

 「聖地、観光、憩いは必ずしも対立しない」。公園に関連した市の検討委員会に加わる機会の多い広島市立大芸術学部長の大井健次さん(58)は指摘する。「平和公園は懐深く人を受け入れる場所だと、みんなが意思統一すればいいのではないか」と言うのである。

2004.4.29