タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 5  平和大通り

    ■ 二つの顔 ■
      「公園」「車中心」 結論出ず

写真
1 架け替えが必要と指摘されながら、見通しの立たない平和大橋(広島市中区)

■橋の架け替えも課題

 時を経て、まちのシンボルに定着してきた広島市の平和大通りには、二つの顔がある。ひろしまフラワーフェスティバルに代表される都市公園的な性格と、交通量の増加に伴う東西の動脈としての役割である。

深刻な財政難

 市はこの十年間で二度ほど、外部の意見を聞きながら通りの将来像を探った。しかし二つの顔の整理が付かないまま、財政難が深刻化した。市民や有識者の意見は、宙ぶらりんのままだ。

 「何のために私たちの意見を聞いたのか」。東区の主婦今野広子さん(57)は、今も憤る。市が、平和大通りリニューアル構想に市民意見を反映させようと二〇〇一年二月に公募した「平和大通りを考える会」メンバーの一人。

 会社員や主婦、大学生ら十二人のメンバーは、テーマを「車中心から人中心へ」と定める。七カ月間で予定の三倍以上の十八回の勉強会を重ねた。「今より車線を増やす必要はない。緑地帯を憩いやにぎわいの場としてもっと活用しよう」。都市公園の機能を重視した提言を導き出した。

車線増の方針

 市はしかし、現行の二車線の外側にバスや緊急車両専用の車線を加える方針を打ち出した。今の緑地帯は削って、副道に新たな緑地帯を設ける。市新たな道づくり整備担当課長の清水俊介さん(51)は「繰り返し実施している市民アンケートでは、道路の拡幅を望む声が多い。提言も考慮した上で、市が判断した」と説明する。その後市は、財政事情が悪化したため、リニューアル計画の費用見積もりさえしていない。車線増構想は冊子の中だけで生きている。

 「考える会」の前段には、一九九四年の有識者、市民たちによる平和大通り将来構想検討委員会がある。平和、にぎわいなど五つのゾーンに分けて整備を進める、との青写真を描いた。この時も、片側三車線化の腹案を持っていた市に同調する意見と、否定的な意見に割れ、提言に明記できなかった。

 歩道が狭く、歩行者や自転車に評判の悪い橋の架け替えも、待ったなしの課題である。

 市の調査で、中区の平和大橋と西平和大橋、西区の緑大橋とも、阪神大震災級の地震で落下する可能性があるとわかった。西平和、緑の二橋は応急処置をしたが、平和大橋は今も手付かずだ。

PFI活用も

 橋の架け替えには一本五十億円がかかるとされる。市は「車線増より橋を優先」と、資金の工面に民間資金を活用した社会資本整備(PFI)の道を探る。ただ、橋のPFI活用は前例がなく、見通しは立たない。

 平和大橋の欄干を設計した故イサム・ノグチの遺作展を開いたこともある西区の建築家錦織亮雄さん(66)は言う。「この通りはみんなの空間。市民が自由に使えるオープンスペースとして育てていけば、都市の中身も濃密になるのに」。平和大通りの将来像が固まりきらないことを残念がる。

2004.5.22