知恵絞り規制クリアを/市民の望み 県警理解
売店で飲み物を買う親子やパラソルの下でくつろぐ男女。大道芸に人だかりができ、トイレもある―。広島市が公表したリニューアル後の平和大通りである。
公園的な活用
「三橋の架け替えに展望が見えない。都心のにぎわいや回遊性を高める空間づくりを優先する」。二十一日の市議会建設委員会で、池上義信道路交通局長(55)が狙いを説明した。財政難で立ち往生する施設整備を先送りし、今より公園的な利用ができるようモデル地区を二カ所設ける。来年度にも実現する見通しだ。
市はこの十年で、有識者や市民による平和大通りの検討組織を二度つくった。その都度、緑地帯に屋台、フリーマーケットなどで楽しみをつくり出す案が出てきた。市民アンケートの結果もその方向だった。今回の市の構想が実現すれば、十年来の市民の思いがやっと実を結ぶことになる。
制度・許可の壁
今の制度では、緑地帯は道路。道路法や道路交通法に縛られ、何をするにも県警の使用許可と広島市の占用許可が必要だ。新しい事業は、実際はまず認められない。これまでも、意欲を持つ人たちが苦労を続けてきた。
十年前、緑地帯で子ども向けイベントを催した西区の建築家錦織亮雄さん(66)は「いす一脚につき使用料百七十円がかかった。ビー玉で遊ぶための穴を土に二センチ開けようとしたら、区役所に『道路に穴を掘っちゃダメ』と断られたので勝手にやった」と苦笑いする。
中区小町の緑地帯には、十年前から月一回カフェができる。運営する市民グループ、カフェテラス倶楽部(くらぶ)の「総支配人」山崎学さん(50)は「多めに作ったコーヒーを、飲みたい人に無料で配っているだけ」。緑あふれる公共空間で楽しみたい一心でひねり出した「方便」だ。
四月から毎週日曜に中区富士見町に立つひろしま朝市の位置付けは、生産者育成のための社会実験。市の農政担当者が警察などと何度も協議し、開催にこぎ着けた。いざ始まれば多くの市民の支持を受け、にぎわいづくりにも一役買っている。
他市に参考例
道路の活用法では、呉市が制度を変えることで名物の屋台を合法化するウルトラCをやってのけた。道路扱いの歩道を隣接する公園に組み入れ、道路法や道交法の規制を免れたのである。
広島市は近隣住民や市民グループと知恵を出し合い、来年三月までに規制をクリアする道を見いだす。管理する側の県警の七尾英弘交通部長(42)は「安全で快適な交通さえ守られれば、市民の望みに頭ごなしに反対しない。行政がどんな絵を描いてくるかにかかっている」と理解を示す。
通り沿いの企業でまちづくりの勉強会を重ねてきた「平和大通り夢づくりの会」世話人の建設会社社長森信秀樹さん(51)は「官が動けないところは、民に預ける柔軟さが必要」という。今度こそ構想どまりでない、新しい平和大通りが見たいと願う。
パート5おわり 増田泉子、門脇正樹が担当しました。
2004.5.26
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