■「衰退」打開へ新たな動き
広島市西区の会社員宮田のぞみさん(22)が買い物するのは、メーン通りでも百貨店でもない。並木通り周辺の裏通り。「ファッションの店も個性的だし、食事も大抵この辺り」。少なくても月三万円、多い友達は十万円ぐらい使うという。
各地で主流に
都市観光の最大の楽しみは買い物。各地で、その主流になってきたのが裏通りである。大阪なら南船場、福岡なら大名といった狭い空間に、店主の思い入れが詰まった店が連なる。何でもそろう百貨店や、全国共通の郊外店では味わえない発見の面白さがある。
それに対して広島。広島商工会議所の都心活性化推進プロジェクトの昨年の調査では、会議所メンバーや支店長の半数以上が、小規模だが個性的な専門店(路面店)は「充実していない」「衰退している」と答えた。
それを裏付けるように、市民も含めた来訪者約四千人の都心の行動パターンは、大多数が紙屋町―本通り―八丁堀の「コ」の字型だった。回遊性を持つ「ロ」の字にはなっていないし、裏通りのそぞろ歩きは望むべくもない。宮田さんはまだ少数派である。
広島都心では一九七〇年代後半から八〇年代にかけ、「並木」「じぞう」の二つの通り名が地元の手で付けられ、定着した。だがその後、新しい通りはできていない。
「裏通りは、郊外にはない街ならではの魅力。滞在時間を延ばすためにも充実させたい」。プロジェクト委員長の鵜野俊雄・ヒロテック会長(68)は頭をひねる。
その裏通りを舞台に最近、新しい動きが出てきた。
ベロタクシー
三輪車を流線形のカバーで覆った「ベロタクシー」が七月、都心に登場する。環境にやさしい乗り物としてヨーロッパで生まれ、二年前から京都、東京などで走る。ジョギング並みの速度が街の散策や車体広告に重宝されている。
運行するのは、中区で飲食業や不動産業を手がける蝉本直(せみもと・ただし)さん(36)。警察と話し合い、平和記念公園から並木通りにかけての裏通りを通る。蝉本さんは「街の魅力や情報を伝えられるよう運転手教育を徹底し、お客さんに広島を好きになってもらいたい」と張り切る。
大型の花飾り
ベロタクシーも通る市まちづくり市民交流プラザ(中区)前の通りには夏、大型花飾りが登場する。維持管理まで責任を持つのは、「ソーシャルガーデナー」を名乗る人たち。自宅の庭を飛び出して、ガーデニングでまちづくりに貢献する気概だ。
「プラザができて、格段に人通りが増え、活気が出てきた。花の輪が広がり、通りの名前が付いたらうれしい」。中心になって活動する橋本真知子さん(57)が夢を語る。
自然発生的に店が現れ、いつの間にか雰囲気が漂うのが裏通りの醍醐味(だいごみ)。大型店をぽんと誘致するようにはいかない。鵜野さんは「宝はいっぱいある。トップダウンじゃできない。みんなの気持ちのベクトルを合わせて、楽しくいい街にしようじゃないか」と呼び掛ける。
2004.6.2
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