まちづくりが量から質へ変わってくると、行政単独の取り組みでは限界が出てくる。そこで登場するのが「協働」。行政と市民、民間非営利団体(NPO)、企業、専門家集団などさまざまな組み合わせがある。ただ「協働」のやり方が手探りなので、あちこちできしみが生まれている。
たとえば広島市中区の元安橋東詰めの水辺のコンサートは、市と特定非営利活動法人(NPO法人)の意思疎通を欠き、桜の盛りを逃した。屋台の営業が実験的に認められた京橋川沿い。焼き鳥屋はOKか、質を誰がどう評価するか―など具体的な運営基準作りまで任されては、事務局といえども市には荷が重い。
時間外に活動
東京都港区では、NPOとの付き合い方に悩んだ職員たちが、自らNPOとして勤務時間外に活動を始めた。事務局長の区教委次長、小林進さん(54)はメリットの一つに「公平、平等から離れられる」を挙げる。
三宅島の農園が区民に花を贈りたいと申し出たことがあった。区だと、担当課、受け取りや配布の人員や手当て、区民に平等に配る方法は―と検討が延々と続く。小林さんたちは花の一部を区役所に植えて公共性の形を整え、残りは保育園を通じて子どもに配った。
双方が喜び、文句は全く出なかった。役所の内部事情で手続きに手間取り、職員の負担が増えたら、農園の当初の心意気はなえたかもしれない。
市民によるまちづくりに詳しい広島工業大の福田由美子助教授は、協働=パートナーシップは、ネットワークの上に成り立つと考える。日常的な信頼関係で結ばれた市民グループや企業などの緩やかなつながりは、「苗床」のイメージという。
公共空間で屋台の公募をするとする。苗床から関心や知識のある集団が加わった「第三の組織」に、行政は選考作業を託す。組織の顔触れが多彩なほどバランス感覚があり、理不尽な横やりははね付けられる。少数でも大きな声で批判されれば弱い行政とはひと味違う。目的が達成されれば、メンバーは苗床に戻る。
思い切って任せるには、途中経過の公表と第三者評価のシステムを作り、透明性を確保するしかないと福田さんは主張する。一般の市民やメディアの目にさらして、誤りや行き過ぎがあればただす。成果があれば褒めて応援するのだ。
民の意欲が高まり、動きが出てくると、逆に行政マンにしかできない役割も見えてくる。
つなぎ役意識
港区でNPOをつくった小林さんは、役所に専門窓口を作っただけでは市民のニーズや活動を受け止めきれないと痛感したという。しょせん、縦割りの枠には収まらないからだ。すべての部署がNPOを含む市民の活動への知識と、協働の意欲を持つべきだと考え、官と民、民と民とのつなぎ役を任じている。
志ある人が力を発揮できるよう、利害調整したり、新たなルールを作ったり、演出したり…。右肩上がりで予算が十分に組めた時代とは別の、汗や知恵の要る仕事だ。
2004.7.15
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