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20021002
臨界の波紋 JCO事故から3年



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東海村村長インタビュー
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経済損失
賠償147億円、訴訟なお
 

団地や農家に風評被害


 臨界事故を起こした茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所から南西へ三キロ余り。新しく開発された住宅団地「フローレスタ須和間」の広々とした敷地が広がる。

 開発面積約二十九万平方メートル(七百九区画)。茨城交通(水戸市)が手掛ける新興団地には、これまでに二十戸近い住宅が建っている。

 ところが、この団地の土地価格が「JCOの臨界事故に伴う風評被害で大幅に下落した」として、茨城交通は先月十日、総額約十八億七千万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。

 ▽買い手は半分

 「当初は坪当たり二十七万円で二〇〇〇年から販売する計画だった。しかし、臨界事故の影響で販売が一年遅れた上に、土地価格も二十一万円に下げざるを得なくなった」。東京都多摩市の原告側訴訟代理人(57)はこう指摘する。

 これまでに売り出した四十八戸のうち、買い手がついたのは二十五戸。「事故が売れ行きにまで影響を及ぼしているのは、疑問の余地がない。が、原告が求めているのは差額六万円のうち一般の宅地の下落分を差し引いた約五万二千円のみ」と強調する。

 茨城交通とJCOは、これまでに断続的に交渉を重ねてきた。しかし、示談は成立せず、事故から三周年で時効が成立するのを前に、同交通が提訴した形だ。

 JCO側は「基本的には事故との因果関係が認められるかどうかが問題」という。科学技術庁(現文部科学省)の原子力損害調査研究会が二〇〇〇年三月にまとめた報告書には、風評被害を含む営業損害について、事故から二カ月間に生じた減収分を「損害と認められる」としている。JCOはこの見解を、交渉における重要な根拠にしている。

 ▽不満残る解決

 JCO総務グループ長の大場浩正さん(40)によると、今年八月末までに示談で解決した件数は約八千件(対象人員は約十六万五千人)。JCOの親会社である住友金属鉱山(東京)が支払った総額は百四十七億一千万円。損害賠償請求があったうちの99.7%に当たる。「残りは民事訴訟になっている七、八件を含め約二十件」と説明する。

 ところが、JCOが「示談で解決済み」とする中には、近郊農家の交渉窓口であるJAグループなどに強い不満が残っているケースも目立つ。風評被害に伴う短期間の経済的損失を示談で早期に受け取ったばかりに「その後も続いた影響に対して損害賠償が求められなくなった」というのである。

 ▽根拠ない期限

 大幅な売り上げ低下を理由に今年三月、事故から二年間分の損失約十八億円の賠償を求めて東京地裁に提訴した茨城県金砂郷町の納豆製造メーカー「くめ・クオリティ・プロダクツ」。東京都千代田区の原告側訴訟代理人(62)は「風評被害は二カ月程度が相当などという期限に何の根拠もない。現にその影響が今も続いている以上、その後の損害も随時追加する」と主張する。

 JCOの臨界事故は、中性子線の放出が中心で、核燃料棒が溶融して膨大な放射性物質が北半球全体を覆ったチェルノブイリ原発事故(八六年)被害などとはスケールが違う。

 だが、ほんの微量のウランが臨界に達するだけで、直接的な周辺住民への影響ばかりでなく、風評被害などに伴う経済的損失がいかに膨大なものになるか。JCOの事故はその現実を如実に物語っているといえる。
JCOの臨界事故で「土地価格が大幅に値下がりした」とされる茨城交通が開発する団地(茨城県東海村)
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