中国新聞

■ 国連軍縮大阪会議を振り返って ■■■
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2003ヒロシマ祈りの日

ヒロシマ胎動

2003/08/25
核軍縮の現状と課題

NPT脅かす米に抗議 
非核地帯新設 一筋の光


 「大量破壊兵器の拡散」「現在の安全保障」をテーマにした二つの全体会議では、北朝鮮の核保有や一国行動主義を強めるブッシュ米政権への強い懸念や、批判が相次いだ。

 韓国国連代表部次席大使の千英宇氏は、一九九二年に北朝鮮と合意した、朝鮮半島の非核化宣言などに言及しながら、「われわれの懸念を取り除くには、単に北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)の規定に従うだけでは不十分。ウラン濃縮やプルトニウム再処理施設の解体を含め、核兵器プログラムの完全な放棄を求める」と強調した。

 千氏は同時に「最大限の外交ルートによる交渉努力が必要である」と、間もなく始まる六カ国協議に期待を寄せ、この問題を安易に安保理に諮ることを戒めた。

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 米ヘンリー・スチムソンセンター上級研究員のベンジャミン・セルフ氏は「金正日政権は、その体制を認めようとしないブッシュ政権が去るのを待っている。六カ国協議はそのための時間稼ぎにすぎない」と悲観的な見方を示した。

 その一方で千氏やセルフ氏を含め、参加者のほぼ全員が核保有国の軍縮努力の不足を批判。とりわけ米国の核政策が「世界のNPT体制の存続を揺るがせている」との認識で一致した。

 非同盟諸国(NAM)の議長国を務めるマレーシア外務省大使のハスミ・アガム氏は、不拡散体制を堅持し、核軍縮を実現するには「包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准が不可欠。しかし、米政権はCTBTを無視し、核実験の再開を目論(もくろ)んでいる。これではNPTの枠組みを自ら壊すようなものだ」と憤りを隠さなかった。

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 こうした中で「中央アジア非核兵器地帯が今年中にも実現するだろう」との見通しを語ったウズベキスタン国連・国際政治機関部長代理のカロミディン・ガドエブ氏の報告は、唯一の明るい話題とも言えた。

 参加国はウズベキスタンのほかにカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの旧ソ連五カ国。ガドエブ氏は、国連を仲介役に交渉を進めてきた経緯を説明しながら、「非核兵器地帯の設置は、地球規模での不拡散体制の強化につながり、テロリストに核物質が渡らないようにするためにも役立つ」と話した。

 参加者は、厳しい核軍縮状況下にあるだけに、二〇〇五年に開かれるNPT再検討会議に向け、非核国政府や世界のNGO、自治体などが連携して核保有国に圧力をかける必要があることを確認し合った。