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防災〜もしも大地震が起きたら

自分なりの備え 考えよう


自分たちが住んでいる地域が、大地震や津波に襲われたらどうなるでしょう。そして、その時、どうすべきでしょう。大きな被害を起こした東日本大震災。決して遠い世界の出来事ではありません。

広島県の調査によると、震度7の地震が県内で起こる恐れがあります。愛知県沖や四国沖の太平洋を震源とする東南海、南海地震も、今後30年以内に発生する可能性が高く、最大1・1メートルの津波が押し寄せるのです。腰ほどの高さですが、あっという間にのみ込まれてしまいます。

いざというとき自分たちに何ができるか、災害を想定したカードゲームを通して考えました。体を動かしながら災害時などにすべき行動を覚えるゲームにも挑戦。避難所の食事体験もしました。さらに、東日本大震災の被災地へ送ろう、とメッセージを寄せ書きしました。


広島県が被害を想定 震度7 死者最大3400人

広島県地震被害調査報告書というものがあります。阪神大震災を機に、2007年3月に県が作りました。四国沖の太平洋を震源とする「南海地震」や愛知沖の「東南海地震」、広島県西部から山口県東部にある断層で発生する地震、どこでも起こりうる「直下地震」などを想定。人や建物、経済がどのような被害を受けるか書かれています。

人的被害が一番大きいのは、冬の午後6時に、廿日市市から広島市安佐北区まで約20キロ続く五日市断層で地震が起きた場合です。最大震度は7で、死者は3400人に上ります。32万人が避難所生活になり、家から10キロ以上離れていて、歩いて帰れない人は16万3000人にもなります。避難所や医療施設なども計964カ所が通常通り使えなくなるそうです。


対応策として、建物の耐震化や、土砂崩れ、地震などが起きた時の被害予想と避難場所を示した「ハザードマップ」の活用が大切です。(高3・岩田皆子、高2・熊谷香奈)



災害想定「クロスロード」

 

クロスロードで自分の出した答えの理由について話し合うジュニアライター

災害時のいろいろな場面を想定した質問に「Yes」「No」で答え、理由を話し合うカードゲーム「クロスロード」を体験しました。講師の呉市消防局、林国夫さん(50)は「正解はありません。事前に疑似体験することで、いざというときのこと、そして被災地への思いを持ち続けてほしい」と話していました。


大津波 近所の3人捜しに戻る?

Q あなたは野球部の主将。震度6の地震が発生。40分前後で大津波が襲来しそう。声を掛け合い10分余りで高台への避難が完了した。が、近所の女子マネジャー、その母と祖母の3人だけ姿が見えない。捜しに戻る?

Yes(戻る)が5人、No(戻らない)が10人でした。Yesと答えた人の意見は「どこにいるか見当がつくはず」「野球部だから足も速く、すぐ戻ってこられるだろう」などでした。一方、Noの理由は「3人が既に他の場所へ逃げている可能性がある」「短時間で捜さないといけない」「入れ違いになるかもしれない」などがありました。(高1・田中壮卓)

避難所に少数の期限切れ弁当。配る?

ラップを敷いた紙のおわんに、弁当を使った雑炊を入れるジュニアライター

Q あなたは避難所のリーダー。150人の避難所に、配布が遅れ、昨日が消費期限の弁当60個が届いた。どうするか。

「家族ごと」「配らない」 雑炊にする解決策体験

それぞれが考えを紙に書きました。「家族ごとに配る」「妊婦、子ども、老人、障害をのある人に優先的に配る」「二つに分けて120人分作る」などがありました。「配らない」の意見もありました。阪神大震災では、平等を原則とする行政の立場で、配布しないこともあったそうです。

解決策の一つに「まとめて雑炊を作る」があります。実際に、弁当5個を調理しました。参加した17人がおなかいっぱいになれる、魔法のようなメニューでした。

作り方は簡単です。鍋に、水と雑炊のもと、弁当の中身を入れて煮込むだけです。雑炊のもとの代わりに、インスタントのコンソメなども使えます。てんぷらは衣を外し、卵焼きや魚、野菜の煮物は小さく切ります。

紙のおわんは洗わずに済むよう、ラップを敷きました。雑炊は意外とおいしく、食べやすかったです。(中3・末本雄祐)


避難所 受験勉強に専念する?

Q あなたは避難所にいる受験生。人手が足りず仕事を手伝う日々だが、このままでは志望校に受からないかもしれない。避難所を手伝わずに勉強に専念するか。

Yes(専念する)が3人とNo(専念しない)が12人でした。Yesの理由として「合格したら避難所の雰囲気が良くなる」「浪人するとお金がかかる」がありました。また、Noの人は「周りの人の気持ちを考えていない」「夜や昼休みなど隙間の時間を勉強に使えるのでは」など言っていました。(中3・大林将也)

避難所 非常持ち出し袋開ける?

Q 大地震で自宅が半壊して、避難所へ行った家族。非常持ち出し袋には3日分の水と食料がある。一方、避難所には水も食料もない家族が多数いた。非常持ち出し袋を開ける?

Yes(開ける)が8人、No(開けない)が7人。Yesと答えた人は「袋がなくて困るのはその人の責任。持っているなら開ければいい」「他の人にも分けるべきだ」などの意見でした。Noの中には「いつ救援物資がくるか分からない以上、開けるべきではない」「開けるとしても隠れて食べる」という意見がありました。(高1・田中壮卓)

余った救援物資の古着、焼く?

Q あなたは救援物資担当の職員。大量に余った古着を焼くか。

Yes(焼く)が8人、No(焼かない)が4人でした。Yesの人は「次に来る物資に期待すればいい」「倉庫代がかかるなら無駄」といった理由でした。Noの人は「避難所の床に敷く」「布にすればいい」と言っていました。  実際、仕分けが大変だったり、季節が違っていたりして余っているそうです。林さんの「自分の住む地域で古着屋に売るか、フリーマーケットをし、売り上げを被災地支援として寄付する」とのアイデアに納得しました。(中3・大林将也)

ぼうさいDUCK 絵のポーズ まねて学習


林さん(右端)が出した「地震」のカードを見て、「ダック」と言いながら頭を抱えて身をかがめるジュニアライター

幼児向けの防災体験用カードゲーム「ぼうさいDUCK(ダック)」をやってみました。体を動かし、声を出して遊びながら学ぶゲームです。

カードは縦36・5センチ、横25・7センチで12種類あります。両面に絵が描いてあります。「地震」「火事」など表を示されたら、裏の「アヒル(ダック)が頭を抱えて体を丸める」「タヌキがぬれたハンカチを口にあてる」絵と同じようにポーズを取るのです。DUCKは英語で「(身を)かがめる」の意味もあります。

体験で「地震」のカードが出された時、私は混乱して頭を抱えられませんでした。思うように体が動かなかったのです。(高1・城本ありさ)


阪神大震災時の難問 教材に

クロスロードを開発 京都大防災研究所 矢守克也教授


クロスロードは、京都大防災研究所教授の矢守克也さん(48)が中心になって開発しました。阪神大震災から10年後の2005年へ向け、震災を検証するプロジェクトの一環で生まれました。神戸市の職員や市民が判断に悩んだ問題をカードゲームで再現しています。「ゲームを通して討論することで、自分のこととして悩んだり考えたりする教材」と矢守さんは説明します。

ゲームの成果は東日本大震災でも見られました。仙台市の人から届いたメール。以前に体験していたため、食料の分け方など避難所で起こりうる問題を想定でき、うまく対応できたそうです。

「危険度がゼロでない、原発周辺の地域にボランティアに行くか」。矢守さんは今回の震災で新たに出てきた「悩み」を生かした東日本大震災版クロスロードを作りたい、と考えています。(高1・城本ありさ)



取り組みたい こんなこと

今回の取材を通し、防災について、日々の身近なことから「取り組みたいな」と考えたことを提案します。

 

●学校と地域 一緒に避難訓練

学校ごとの避難訓練を、地域全体でしたいです。クラスごとに素早く行動し、避難所に行くまでやるのです。時には、完全抜き打ちの訓練もいいでしょう。また「火事の時は、はいつくばるくらい低姿勢で」「津波の時は走る」など事前学習も大切です。

●布団そばに靴&懐中電灯

寝ている時に地震が起きた場合を想定し、布団のそばやベッドの下に、靴と懐中電灯を置いておきましょう。停電したら暗いと移動が難しいし、物が落ちて割れていたら歩くのに危ないからです。

●衣類や食品業界による支援 後押し

服や食べ物など救援物資を送っても現地では不要で、迷惑になる場合があります。そこで、それぞれの業界で、季節に合わせた新品の物資が提供できるように日頃から体制をつくっておいてもらいます。災害時には、私たちは、物資でなく、業界団体にお金を寄付するようにします。

●散歩しながら近所を把握

日頃から自分の街を散歩しておくといいでしょう。コンビニや避難所の場所や行き方、マンホールや公衆電話、自分が住むマンション内の消火器の位置など、歩きながら何となく確認するだけでも、いざというときに役立つはずです。


被災地と絆 旗作ろう メッセージ書き送付

被災地の子どもたちを思い、旗にメッセージを書くジュニアライター

東日本大震災で被災した子どもたちに向け、ひろしま国のジュニアライターは「がんばろう日本」「広島と東北はつながっている」などとメッセージを書いた旗を作りました。呉市消防局の林国夫さん(50)を通じて被災地に届けます。

縦84センチ、横115センチの黄色い旗の中心に「絆」と書いたフェルトを張り、周りに花や日本列島、笑顔などのイラストを描きました。「現地には行けないが、エールを送りたい」「元気と笑顔を届けたい」との思いを込めています。

皆さんもグループや学校単位で林さんを通じ、被災地の小中高校などにメッセージ入りの旗やうちわを送りませんか。編集部=電話082(236)2714。(高2・矢田瑞希、写真も)