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世界の中のヒロシマ

(20)歌い継がれる「禎子さん」 近藤和正

サインバイノー!

モンゴル語で「こんにちは」の意味です。モンゴルと聞いて何をイメージしますか。大草原、遊牧、朝青龍・白鵬両横綱の出身国…。最近では豊富な鉱物資源も日本で話題になっていますね。この国は結構ヒロシマとの関係もあるんです。

今年は日本・モンゴルの外交関係樹立35周年です。両国政府は「モンゴルにおける日本年」と定め、モンゴルでは日本を紹介する多くの催しがあります。その一環として8月6日にウランバートル市の子ども芸術センターで「原爆と人間展」が開かれました。

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「原爆と人間展」の開会式。地元の子どもたちも参加し、熱心に展示資料を見つつ、平和を祈った(8月5日)

こんどう・かずまさ

愛知県出身。大学院修了後、亜細亜大学非常勤講師を経て2003年外務省入省。今年9月まで在モンゴル日本大使館勤務。

開会式で、ツェレンドルジ・センター長は「原爆の惨劇を繰り返すなと世界の人々が声を一つに叫んでいる。この日を後世に伝えるようと、本日の展示を企画した。世界に平和を」とあいさつしました。夏休み中にもかかわらず、多くの青少年が訪れました。モンゴルでは非核に対する意識が伝統的に高いのです。

ヒロシマとの関連では、佐々木禎子さんを歌った「ヒロシマの少女の折り鶴」という歌があります。日本で活躍しているモンゴル人歌手オユンナさんが日本でも紹介していますが、原爆の悲劇と平和の大切さを訴える歌として、発表された1979年以降、いまだに歌い継がれています。

また日本大使館は原爆投下60周年の2005年、子ども新聞ツォフ紙と共催で、10月に広島の原爆資料館の資料を利用した「原爆展」を開きました。来場者一人一人が作った折り鶴約3000羽は広島市の原爆資料館を通じて平和記念公園内の「原爆の子の像」に寄贈されました。

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そのほか広島市にある非政府組織(NGO)「アジアの花たば」は、モンゴル国立大学2号館に「広島ルーム」を設けています。広島・長崎の核問題および日本文化に関する常設展示が見られます。

モンゴルは1992年、国連総会において一国非核の地位を宣言し、98年の国連総会ではこの宣言を歓迎する決議が採択されました。今年2月に安倍晋三首相(当時)、エンフバヤル大統領が署名した「今後10年間の日本・モンゴル基本行動計画」では、この決議を尊重しながら「核拡散防止条約を礎とする核軍縮不拡散体制の維持強化に向けて協力していく」と書かれています。

日本とモンゴル両国の関係は「総合的パートナーシップ」関係の構築を目指して、あらゆる分野で拡大・発展しています。モンゴルは、世界唯一の被爆国として核兵器のない平和で安全な世界を実現することを目指す日本の心強いパートナーとなってくれることでしょう。