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世界の中のヒロシマ

(25)平和教育 被爆者らが貢献 乗松聡子

カナダはヒロシマ・ナガサキの体験に学び、平和を創るための活動が盛んな場所です。知り合いの小学校教師T・アンダーソンさんは「サダコと千羽鶴」(英文、エリナー・コア著)などを積極的に授業教材に取り入れています。広島、長崎の市長が世界の都市に呼びかけた「平和市長会議」には1月末現在63都市が加盟していて、私の住むバンクーバー市も参加しています。

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バンクーバーの原爆展会場で折り鶴をつくる参加者たち。手前右から3人目がサリバン市長、その左隣はデイビッド・ラスキーさん(昨年8月、アーク・ハン氏撮影)

のりまつ・さとこ

東京都武蔵野市出身。非政府組織(NGO)ピース・フィロソフィー・センター代表、バンクーバー九条の会会員。11年前にカナダに移住。8月には原爆について広島と長崎で学ぶ日米学生の旅に通訳として参加している。

広島で被爆したラスキー絹子さんは2004年に亡くなるまで、地域や学校で証言や折り鶴づくり指導などをし、バンクーバーの平和教育に貢献しました。その夫デイビッドさんの尽力もあり、ここでは毎年8月6日を「ヒロシマ・デイ」とする宣言がされています。昨年8月4、5日に開かれた、恒例の日系カナダ人の夏祭り「パウエル祭」でもサム・サリバン市長が核兵器廃絶と平和を訴える宣言文を読み上げました。カナダ国内ではこの時期に計18都市で原爆に関係するイベントがあったそうです。

バンクーバーではこのパウエル祭と同時に原爆展を開きました。05年に日本の憲法九条を守り、世界に九条を知ってもらうために設立されたバンクーバー九条の会の主催です。この会は06年に広島原爆をテーマとした井上ひさしの「父と暮せば」の朗読会を開いた際、日本被団協から贈呈されたパネル資料を使って「原爆と人間展」を各地で展開しているのです。

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昨年のこの原爆展では、被爆者の苦しみと闘いを伝えたパネルと同時に、旧日本軍の慰安婦問題も扱いました。アジア系移民の多いバンクーバーでは、ヒロシマ・ナガサキを伝えると同時に日本の加害も一緒に伝えていってこそ幅広い市民の理解が得られるであろうと考えたからです。予想通り、多くのメディアの注目を浴びました。

また昨年10月26日、東部トロントでやはり広島の被爆者、サーロー節子さんがその長年の平和活動の功績に対し、「オーダー・オブ・カナダ」を授与されました。カナダでは民間人に与えられる最高の栄誉とされる勲章です。バンクーバーではラスキー絹子さんの胸像がシーフォース平和公園に設置されることも決まりました。

このようにカナダ全土で、ヒロシマは被爆者、平和活動家、教育者によって語り継がれています。私もその一端を担い続けていこうと考えています。